マイクロ法人設立と相続対策の基本 ~マイクロ法人を活用した相続対策の全体像と基礎知識~

相続対策は、多くの方が人生のどこかで直面する重要なテーマです。特に近年、「マイクロ法人」を活用した相続対策が注目されています。この記事では、マイクロ法人設立の基本から、相続対策としての活用方法、メリット・デメリットまで、実務に役立つ基礎知識を分かりやすく解説します。

マイクロ法人とは、少人数で運営される小規模な法人のことを指します。主に個人事業主やフリーランスが、税務面や社会保険料の負担軽減、資産管理の効率化などを目的に設立するケースが増えています。法的には一般の株式会社や合同会社と同様の法人格を持ちますが、役員や従業員が1~2名程度といった小規模な運営が特徴です

マイクロ法人の設立手順は、一般的な法人とほぼ同じです。主な流れは以下の通りです

  1. 会社の基本事項(商号・本店所在地・資本金など)の決定
  2. 定款の作成・公証人役場での認証
  3. 法人印鑑の作成
  4. 資本金の払込
  5. 法務局への設立登記申請
  6. 税務署や社会保険事務所への届出

設立時には、必要書類の準備や登記費用(株式会社の場合は約20万円前後、合同会社は約6万円前後)がかかります。設立後は、法人としての会計・税務管理や社会保険の加入手続きも必要です。

なぜマイクロ法人が相続対策になるのか

相続税は、個人が所有する財産に対して課税されますが、法人が所有する財産は相続税の対象外となります。そこで、マイクロ法人を設立し、資産(不動産や有価証券など)を法人名義に移転することで、個人の相続財産を減らし、相続税の節税効果が期待できます

マイクロ法人による資産の管理・承継の仕組み

  • 法人が所有する資産は、法人の株式を相続することで、資産全体を一括して承継できます。
  • 不動産や金融資産など複数の資産を法人名義にまとめることで、相続時の手続きが大幅に簡略化されます
  • 株式の分配方法を工夫することで、後継者問題や相続人間のトラブルを回避しやすくなります

具体的な事例

たとえば、Aさん(60歳)は、収益不動産2棟と現預金を所有していました。相続対策としてマイクロ法人「B合同会社」を設立し、不動産と現預金を法人に移転。Aさんは法人の代表社員となり、株式の一部を長男に贈与しました。Aさんの死後、長男は法人の株式を相続し、不動産の名義変更や各種契約手続きが不要となり、相続税の負担も軽減されました。

  • 相続税の節税効果
    法人所有資産は個人の相続財産から除外されるため、相続税の課税対象額を減らせます
  • 資産管理・運用の効率化
    複数の資産を法人で一元管理でき、運用や管理が容易になります
  • 納税資金の確保
    法人が現金を保有することで、相続時の納税資金を確保しやすくなります
  • 相続手続きの簡略化
    株式の承継のみで資産全体を引き継げるため、手続きや費用の負担が大幅に軽減されます
  • 設立・維持コストがかかる
    設立費用や毎年の会計・税務申告、社会保険料などのコストが発生します
  • 実態のない法人は否認リスクがある
    節税目的のみで実質的な事業活動が伴わない場合、税務署から否認されるリスクがあります
  • 事業承継税制の対象外となる場合がある
    資産管理会社(マイクロ法人)が事業承継税制の特例措置を受けられないケースもあるため、専門家への相談が重要です
  • 法人解散時の手間と税負担
    法人を解散・清算する際にも手続きや税金が発生します
  • 資産の移転時には、譲渡所得税や登録免許税などが発生する場合があります。
  • 株式の分配や贈与のタイミング、遺言書の作成など、相続人間のトラブル防止策も検討しましょう
  • 法人の形態(株式会社・合同会社など)や資本金、役員構成も事前に十分検討することが大切です

マイクロ法人を活用した相続対策は、資産の承継や相続税の節税、手続きの簡略化など多くのメリットがあります。しかし、設立・運営コストや税務リスク、事業承継税制の適用可否など、注意すべき点も少なくありません。マイクロ法人設立を検討する際は、専門家に相談し、ご自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。正しい知識をもとに、将来の安心に備えましょう。