マイクロ法人での投資信託売却「解約」と「買取」―税務上の違いと注意点

マイクロ法人を活用した資産運用が注目される中、投資信託の売却時に「解約」と「買取」という2つの方法があることをご存じでしょうか。どちらも換金方法ですが、税務処理や会計上の取り扱いに違いがあるため、正しく理解しておくことが大切です。本記事では、マイクロ法人で投資信託を売却する際の「解約」と「買取」の違いを、実務でよく使われるキーワードを交えながら詳しく解説します。

解約とは

「解約」とは、投資信託の受益者(法人)が信託銀行に対して信託財産の一部解約を請求し、その分の資産を現金として受け取る方法です。解約請求によって得られる利益は、配当所得として扱われます。

買取とは

「買取」とは、受益者が証券会社などの販売会社に対して投資信託の受益権の買取を請求し、販売会社がこれを買い取ることで現金化する方法です。こちらは有価証券の譲渡とみなされ、譲渡益または譲渡損として会計処理されます。

法人税の取り扱い

  • 解約の場合
    解約による利益は「配当金」として扱われ、15.315%の所得税が源泉徴収されます。受け取った配当金は「受取配当金」として会計処理し、法人税の計算時に本業の利益と合算します。
  • 買取の場合
    買取で得た利益は「有価証券売却益」として扱われ、源泉徴収はされません。利益は本業の利益と合算し、法人税の対象となります。

消費税の取り扱い

  • 解約
    解約による収益分配金は非課税売上に加算され、課税売上割合の分母に算入されます。
  • 買取
    買取の場合は譲渡代金の5%が非課税売上に加算されます。

会計処理の違い

売却方法会計処理源泉徴収勘定科目
解約配当金の受取あり(15.315%)受取配当金
買取有価証券の譲渡なし有価証券売却益

例えば、マイクロ法人「サンプル合同会社」(代表者:山田太郎さん、40歳)が、投資信託を1,000,000円で購入し、1,100,000円で売却した場合を考えます。

  • 解約の場合
    解約金額1,100,000円から手数料22,000円と所得税15,315円(15.315%)が差し引かれ、普通預金には1,062,685円が入金されます。帳簿上は「受取配当金」として処理し、源泉徴収された所得税は法人税申告時に控除できます。
  • 買取の場合
    買取金額1,100,000円から手数料22,000円が差し引かれ、1,078,000円が普通預金に入金されます。帳簿上は「有価証券売却益」として処理し、源泉徴収はありません。
  • 源泉徴収された所得税は、法人税の確定申告時に控除可能です。
  • 配当金の益金不算入制度は、特定のETFなど一部の投資信託のみが対象です。通常の株式投資信託の解約配当金は益金不算入の対象外となるため注意が必要です。
  • 解約と買取で消費税の課税売上割合計算が異なるため、消費税の申告にも影響します。

Q. 法人で投資信託を売却する際、「解約」と「買取」はどちらが有利ですか?

A. 税務上の取り扱いが異なるため、法人の利益状況や消費税の課税売上割合などを考慮して選択することが重要です。特に源泉徴収の有無や益金不算入の適用可否に注意しましょう。

Q. 個人の場合と法人の場合で違いはありますか?

A. 個人の場合、平成21年度の税制改正により「解約」と「買取」の税務上の違いはなくなりましたが、法人の場合は依然として取り扱いが異なります。

マイクロ法人で投資信託を売却する際、「解約」と「買取」では税務上の取り扱いが異なります。解約は配当所得として源泉徴収があり、買取は譲渡益として源泉徴収がありません。消費税や会計処理にも違いがあるため、事前にしっかり確認し、最適な方法を選択することが重要です。税務申告時には、源泉徴収税額の控除や益金不算入制度の適用可否など、細かな点にも注意しましょう。正確な情報は国税庁や金融庁の公式サイトも参考にしてください。