役員借入金・立替金の処理と仕訳の具体例|役員個人と法人の資金のやり取りの正しい会計処理

会社経営を行う中で、役員が会社に資金を貸し付けたり、会社の経費を立て替えたりする場面は珍しくありません。こうした「役員借入金」や「立替金」の会計処理を正しく行うことは、法人・役員双方の税務リスク回避や資金管理の観点から非常に重要です。本記事では、役員個人と法人間の資金のやり取りに関する正しい会計処理と、仕訳の具体例をわかりやすく解説します。


役員借入金とは、会社の資金が一時的に不足した際などに、役員が個人資金を会社に貸し付けることで発生する負債です。会社は将来的にこの金額を役員へ返済する義務があります。

  • 会社の運転資金不足時に、役員が現金を会社へ貸し付ける
  • 役員が会社の経費(例:水道光熱費や消耗品費)を個人で立て替える

1. 役員が現金を会社に貸し付けた場合

借方金額貸方金額摘要
現金1,000,000役員借入金1,000,000役員から現金借入

この場合、会社の資産である現金が増加し、同時に「役員借入金」として負債が増加します。

2. 役員が会社の経費を立て替えた場合

借方金額貸方金額摘要
水道光熱費30,000役員借入金30,000電気代立替

役員が会社の費用を個人で支払った場合も、会社にとっては「役員からの借入」として処理します。

3. 役員が自身の口座から会社口座へ振込

借方金額貸方金額摘要
普通預金2,000,000役員借入金2,000,000振込による借入

現金だけでなく、銀行振込でも同様の処理となります2


1. 現金で返済

借方金額貸方金額摘要
役員借入金500,000現金500,000借入金現金返済

2. 銀行振込で返済

借方金額貸方金額摘要
役員借入金1,000,000普通預金1,000,000借入金銀行振込返済

返済時には、負債である役員借入金が減少し、現金または預金が減少します。


立替金とは、会社や役員が一時的に他者のために費用を支払った場合に発生する資産勘定です。たとえば、役員が会社の経費を立て替えた場合、会社はその分を「立替金」として計上し、後日役員に返済します。

借方金額貸方金額摘要
立替金30,000現金30,000役員の旅費立替
借方金額貸方金額摘要
現金30,000立替金30,000立替金回収

会社が役員に無利息または低利で貸付を行った場合、税務上「みなし給与」として課税対象となる場合があります。国税庁の定める基準利率(令和6年現在は0.9%)を下回る場合、差額が給与として扱われます。

また、役員借入金の返済に利息を付す場合は、その利息を「支払利息」として仕訳する必要があります。


  • 会社の資金繰りのために役員が資金を提供する場合、増資(資本金や資本剰余金の増加)または「役員借入金」として処理します。売上計上は誤りです。
  • 役員借入金が長期間未返済の場合、税務調査で資本性負債とみなされることがありますので、返済計画や契約書の作成が推奨されます。
  • 役員の個人的費用を会社が負担した場合、経済的利益として課税対象となる場合があるため、業務関連性の明確化が必要です。

役員借入金や立替金の会計処理は、会社と役員の資金関係を明確にし、税務リスクを回避するために不可欠です。仕訳の際は「何のための資金移動か」「誰が誰のために支払ったのか」を明確にし、正しい勘定科目を用いて記帳しましょう。特に利息の有無や返済方法、長期未返済時の対応など、税務上の注意点も踏まえて運用することが重要です。正確な会計処理で、健全な経営基盤を築いていきましょう。