社会保険料の計算・支払い・仕訳の流れを徹底解説~計算方法と2段階の仕訳処理をわかりやすく~

会社設立後、必ず直面するのが「社会保険料」の計算・支払い・会計処理です。社会保険料は、従業員の福利厚生を支える重要な費用であり、正確な計算と適切な仕訳が求められます。しかし、初めての経営者や経理担当者にとっては、その仕組みや実務の流れが分かりにくいと感じることも多いでしょう。
本記事では、社会保険料の計算方法から、実際の支払い、会計上の2段階仕訳処理までを、最新の公的情報に基づき詳しく解説します。

社会保険料とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険など、従業員と会社が折半して負担する保険料の総称です。これらは法律で加入が義務付けられており、従業員を雇用する事業主は必ず対応しなければなりません。

社会保険料の計算は、主に「標準報酬月額」と「保険料率」を基準に行われます。
それぞれの保険ごとに計算式と負担割合が異なるため、順に見ていきましょう。

健康保険料

  • 計算式:
    健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
  • 保険料率は都道府県や加入団体によって異なります。例えば、協会けんぽ(全国健康保険協会)東京都の場合、2025年4月時点での保険料率は9.84%です(会社と従業員が折半)。
  • 従業員負担分 = 健康保険料 ÷ 2

厚生年金保険料

  • 計算式:
    厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.3%(2025年4月時点)
  • 会社と従業員が半額ずつ負担します。
  • 例:標準報酬月額30万円の場合
    300,000円 × 18.3% = 54,900円(会社・従業員それぞれ27,450円ずつ)

介護保険料

  • 40歳以上の従業員が対象です。
  • 計算式:
    介護保険料 = 標準報酬月額 × 1.60%(2024年4月以降)
  • 会社と従業員が半額ずつ負担します。

雇用保険料・労災保険料

  • 雇用保険料は賃金総額に対して一定の率を掛けて算出します。会社と従業員の負担割合は業種や年度によって異なります。
  • 労災保険料は全額会社負担です。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、毎月支払われる給与や手当の平均額を等級ごとに区分したもので、社会保険料の計算基準となります。年1回の定時決定や随時改定によって見直されます。

  1. 毎月の給与計算時に、従業員負担分を給与から天引きします。
  2. 会社は、会社負担分と従業員負担分を合算し、翌月末までに各保険機関へ納付します。
  3. 納付先は、健康保険・厚生年金保険・介護保険は年金事務所、雇用保険・労災保険は労働基準監督署やハローワークです。

社会保険料の会計処理は、発生時と納付時の2段階で行うのが一般的です。
以下、具体的な仕訳例を紹介します。

1. 発生時(給与計算時)

給与計算により社会保険料が発生した時点で、会社負担分と従業員負担分をそれぞれ仕訳します。

会社負担分

借方金額貸方金額
法定福利費会社負担分未払費用会社負担分

従業員負担分

  • 「法定福利費」として計上する方法と、「預り金」として計上する方法があります。
  • 一般的には、従業員分は「預り金」として処理します。
借方金額貸方金額
給与従業員負担分預り金従業員負担分

2. 納付時(翌月の納付時)

実際に社会保険料を納付した際に、未払費用や預り金を取り崩します。

借方金額貸方金額
未払費用会社負担分現金預金会社負担分
預り金従業員負担分現金預金従業員負担分

この2段階の仕訳処理により、会社の経費と従業員から預かった金額を正確に管理できます。

例えば、標準報酬月額30万円の従業員が1名いる場合(東京都・協会けんぽ加入、40歳未満、2025年4月時点):

  • 健康保険料(9.84%):29,520円(会社・従業員各14,760円)
  • 厚生年金保険料(18.3%):54,900円(会社・従業員各27,450円)

給与計算時の仕訳例:

借方金額貸方金額
法定福利費42,210円未払費用42,210円
給与42,210円預り金42,210円

納付時の仕訳例:

借方金額貸方金額
未払費用42,210円現金預金42,210円
預り金42,210円現金預金42,210円

※金額は例示であり、実際は各保険料率や標準報酬月額表に基づき計算してください。

社会保険料の計算・支払い・仕訳は、会社経営において欠かせない重要な業務です。標準報酬月額と最新の保険料率を正しく把握し、会社負担分と従業員負担分を明確に分けて会計処理を行うことが求められます。発生時と納付時の2段階仕訳を徹底することで、経費計上や資金管理の精度が向上し、税務調査にも対応しやすくなります。
社会保険料の実務に不安がある場合は、専門家への相談も検討しましょう。