相続税対策に有効なマイクロ法人活用法と法人化による節税効果

近年、相続税対策として「マイクロ法人(小規模会社)」の設立を検討される方が増えています。特に不動産や金融資産などの資産が多いご家庭では、単なる個人名義での保有よりも法人化による管理・承継が大きなメリットがある場合があります。本記事では、マイクロ法人を活用した相続税の節税方法とその具体的な効果、注意点について詳しく解説します。

「マイクロ法人」とは、主に資産管理を目的とした最小限の規模で運営する法人を指します。個人で所有していた資産(不動産、有価証券など)を法人名義に移すことで、相続時の課税対象となる財産を減らす方法が注目されています

  • 法人所有資産は個人の相続財産から除外されるため、相続税の課税対象額を抑えられる
  • 法人株式を承継する形となるため、相続手続きが簡易化される
  • 不動産を一括で承継可能、遺産分割トラブルを避けやすい

資産を法人に移すメリット

  1. 相続税評価額の圧縮
     法人が不動産等の資産を保有する場合、相続時に個人資産として直接相続されるよりも、法人株式の評価を通じて間接的に承継されるため、通常、評価額の圧縮が可能です。これにより課税ベースが減少し相続税負担が軽減されます
  2. 分散所有で税率の引き下げ
     法人株式を複数の相続人に分散させることで、個々の相続資産を抑え、高い税率の適用を回避できる場合もあります
  3. 所得分散&生前贈与
     法人の役員報酬を利用し、生前から相続人予定者への資産移転(所得分散)が可能。役員報酬は損金に算入されるため、法人・家族それぞれの課税所得をコントロールでき、贈与税・所得税面でもメリットがあります
  4. 経費計上範囲の拡大
     法人経営のため、法人用経費として認められる項目(役員報酬、退職金、保険料など)が増え、さらなる節税効果が生まれます

具体的な相続対策事例

65歳の山本さんは、都内に収益不動産を2棟と2,000万円の金融資産を所有。不動産と金融資産を設立したマイクロ法人「Y資産管理合同会社」に移し、ご自身と長女を役員に就任させました。生前から長女へ役員報酬を分配し、法人名義で退職金・生命保険を準備。不動産売却や資金運用も法人で完結するため、個人の相続財産を減らすことができ、相続発生後は株式会社の株式として相続し、手続きや評価・課税負担も大きく軽減しました

  • 設立・運営コスト
     法人設立費用、毎年の決算・申告、社保負担など維持コストがかかります
  • 実体のない法人はリスク
     名義貸しや実質的な事業実態がない場合、税務調査で「仮装隠ぺい」と判断され否認されるリスクがあります
  • 事業承継税制の対象外となる場合
     資産管理会社の場合、特例措置を全てのケースで活用できるとは限らず、適用条件詳細の確認と専門家相談が必要です
  • 法人解散時の手続き・税負担
     廃業時に追加納税や解散手続きが必要になる場合があります。

マイクロ法人の活用は、相続税の課税対象となる個人財産を法人名義にすることで評価額の圧縮と相続手続きの簡略化が期待できます。また、役員報酬や生前贈与の仕組みを使えば、さらなる税負担の軽減も狙えます。一方で、設立・維持コストや法的リスク、制度の適用外となる可能性がありますので、専門家へ早めに相談し、目的や規模に応じて最適な方法を検討されることをおすすめします