決算整理仕訳とは?マイクロ法人で必要な主な決算整理項目と具体例(減価償却・未払費用など)
はじめに
マイクロ法人を運営する中で、年に一度必ず行わなければならないのが「決算」です。決算の際には、日々の取引を記帳した帳簿をもとに、最終的な数字を確定させるための「決算整理仕訳」が不可欠です。特に減価償却や未払費用など、決算時にしか行わない特別な仕訳は、正確な決算書作成や法人税申告のために重要な役割を果たします。本記事では、マイクロ法人の決算で必要となる主な決算整理仕訳の項目と、具体的な仕訳例をわかりやすく解説します。
決算整理仕訳とは
決算整理仕訳とは、決算時に行う最終的な修正仕訳のことです。企業は日々の取引を複式簿記で記帳していますが、決算では「減価償却費の計上」「未払費用の計上」「売上原価の確定」など、期中には行わない特別な仕訳を追加する必要があります。これにより、正確な損益計算書や貸借対照表を作成し、適切な税務申告が可能となります。
マイクロ法人の決算整理仕訳が必要な主な項目
減価償却費の計上
マイクロ法人でも、パソコンや事務機器などの固定資産を購入した場合は、耐用年数に応じて毎年「減価償却費」を計上します。減価償却費は、資産の価値が時間とともに減少する分を費用として認識するための仕訳です。
減価償却費の仕訳例
- 取得原価:100,000円
- 耐用年数:5年
- 年間減価償却費:20,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 20,000 | 備品 | 20,000 |
また、青色申告の場合、10万円以上30万円未満の少額減価償却資産は、取得年度に全額を経費計上する特例も利用できます。
未払費用の計上
決算日時点で発生しているが、まだ支払っていない費用(例:家賃、保険料、利息など)は「未払費用」として計上します。これにより、発生主義に基づいた正しい損益計算が可能となります。
未払費用の仕訳例(家賃の場合)
- 決算日時点で翌月分の家賃25,000円が未払いの場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
地代家賃 | 25,000 | 未払費用 | 25,000 |
翌期首での振り戻し仕訳:
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
未払費用 | 25,000 | 地代家賃 | 25,000 |
売上原価の確定
商品や材料を扱うマイクロ法人の場合、「売上原価」を正しく計算するために、期首・期末の棚卸資産をもとに仕訳を行います。
売上原価の計算式
売上原価=期首商品棚卸高+仕入高−期末商品棚卸高売上原価=期首商品棚卸高+仕入高−期末商品棚卸高
売上原価の仕訳例
- 期首棚卸高:20,000円
- 仕入高:200,000円
- 期末棚卸高:40,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入高 | 200,000 | 繰越商品 | 200,000 |
繰越商品 | 40,000 | 仕入高 | 40,000 |
その他の決算整理仕訳
- 前払費用・前受収益の整理
- 貸倒引当金の設定(貸倒リスクのある売掛金などがある場合)
- 法人税等の見積計上
これらも、会社の状況に応じて必要となります。
決算整理仕訳の手順と注意点
- 日々の取引を正確に記帳する
- 決算整理仕訳を計上し、各勘定科目の残高を確認する
- 仕訳漏れや二重計上がないか前期と比較する
- 決算整理仕訳が終わったら、決算振替仕訳を行い、損益計算書・貸借対照表を作成する
会計ソフトを活用することで、仕訳の自動化や転記ミスの防止が可能です。
具体的な事例
例えば、マイクロ法人「ABC合同会社」が、2024年度に以下のような取引を行った場合を考えます。
- 事業用パソコン(取得価額18万円、耐用年数5年)を購入
- 決算日時点で4月分の家賃25,000円が未払い
- 期首棚卸高2万円、期末棚卸高4万円、仕入高20万円
この場合、以下の決算整理仕訳が必要です。
- 減価償却費の計上(直接法)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 36,000 | 備品 | 36,000 |
(18万円÷5年=年間36,000円)
- 未払家賃の計上
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
地代家賃 | 25,000 | 未払費用 | 25,000 |
- 売上原価の確定
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入高 | 200,000 | 繰越商品 | 200,000 |
繰越商品 | 40,000 | 仕入高 | 40,000 |
まとめ
マイクロ法人の決算整理仕訳は、正確な決算書作成と適切な税務申告のために欠かせません。特に減価償却費や未払費用、売上原価の計上は、決算時に必ず見直すべき重要なポイントです。会計ソフトの活用や、国税庁など公的機関のガイドラインを参考にしながら、適切な仕訳を心がけましょう。正しい決算整理仕訳を行うことで、経営状況の正確な把握と、将来の事業計画にも役立てることができます。