資本金はいくらに設定すべき?最低資本金制度の廃止と実務的な考え方

会社設立を検討する際、多くの方が悩むのが「資本金をいくらに設定すべきか」という点です。かつては株式会社で1,000万円、有限会社で300万円という最低資本金制度が存在していましたが、現在はこの制度が廃止され、1円から会社を設立できるようになりました。しかし、実際に資本金1円で起業することが最適とは限りません。本記事では、最低資本金制度廃止の経緯と、現代の実務的な資本金設定の考え方について、政府や公的機関の情報をもとに詳しく解説します。

制度の概要と廃止の経緯

かつての商法では、株式会社設立には1,000万円、有限会社には300万円の資本金が必要とされていました。これは会社債権者保護の観点から設けられていたものです。しかし、起業のハードルを下げるため、2006年(平成18年)5月1日施行の新会社法により最低資本金制度は完全に廃止され、1円から会社設立が可能となりました。これにより、資本金の額は実質的に自由に設定できるようになっています。

現行法での資本金の最低額

最低資本金制度廃止後も、会社設立時には必ず何らかの財産(現金または現物)を出資する必要があり、出資額が0円という設立は認められていません。したがって、理論上は「1円起業」が可能となっています。

1. 運転資金・初期費用を基準に設定

資本金は会社の元手となる資金です。設立直後は売上が安定しないことが多いため、最低でも3か月~半年分の運転資金と初期費用を資本金として用意するのが一般的です。例えば、事務所費用、設備投資、人件費、広告宣伝費などを見積もり、必要な資金を算出しましょう。

2. 信用力の確保

資本金は会社の信用力にも直結します。取引先や金融機関から「資本金が少なすぎる会社は経営基盤が弱い」と見られることもあります。特にBtoB取引や大手企業との取引を目指す場合は、ある程度まとまった資本金を設定することが望ましいです。

3. 税金への影響

資本金が1,000万円未満であれば、設立1期目と2期目の消費税納税義務が免除されるなど、税務上のメリットがあります。1,000万円を超えると消費税や法人住民税の負担が増えるため、税金面を考慮して999万円以下に設定するケースが多く見られます。

4. 許認可要件の確認

業種によっては、許認可取得のために最低資本金額が定められている場合があります。例えば、一般建設業では資本金500万円以上が求められるなど、事業内容によって必要な資本金額が異なります。事前に該当する許認可の要件を必ず確認しましょう。

5. 融資や資金調達との関係

金融機関からの融資を検討している場合、資本金額が自己資金として評価されるため、ある程度の資本金を用意しておくと有利です。一般的に、融資額は資本金の1~2倍程度が目安とされています。

総務省や中小企業庁の調査によると、会社設立時の資本金額は100万円~299万円が最も多く、全体の約3割を占めています。また、500万円未満で設立する企業も約44%と多く、無理のない範囲で設定する傾向が見られます。

例えば、飲食店を開業するAさんは、内装工事費や設備購入費、人件費などを見積もった結果、初期費用と運転資金で約300万円が必要と判断し、資本金を300万円に設定しました。一方、IT系のBさんは、初期投資が比較的少なく済むため、資本金を100万円に設定し、必要に応じて増資する計画を立てています。このように、事業内容や計画に応じて柔軟に資本金を設定することが重要です。

  • 最低資本金制度は2006年に廃止され、1円から会社設立が可能になりました。
  • ただし、資本金は会社の運転資金・信用力・税金・許認可・融資などに大きく影響します。
  • 一般的には、3か月~半年分の運転資金や初期費用を基準に、100万円~300万円程度で設定するケースが多いです。
  • 許認可や融資を検討している場合は、必要な資本金額や自己資金要件を事前に確認しましょう。
  • 資本金は後から増資することも可能なので、無理のない範囲で設定し、事業の成長に応じて見直していくことが大切です。