会社設立後に定款をどのように保管・活用すべきか?
はじめに
会社設立時に作成する「定款」は、会社運営の基本となる最重要書類です。設立後も適切に保管し、必要な場面で活用することが法令等で求められています。本記事では、定款の保管方法および活用事例、紛失時の対応などを行政書士の監修のもと、最新の政府等公的情報に基づいて解説します。
定款の保管義務と方法
株式会社の場合、会社法により定款は本店および各支店に備え付けることが義務付けられています。具体的な保管場所の指定はありませんが、一般的には会社の金庫や貸金庫等で厳重に保管すること、必要に応じて専門家に預けるケースもあります。また、設立時に認証を受けた「原始定款」は公証役場で20年間保管されているため、紛失した場合でも期間内であれば謄本の取得が可能です。
電子定款の場合は、電子データとして社内のサーバやクラウドなど情報セキュリティが確保された環境で保存し、必要な際は印刷やディスクから提出できます。
定款の活用場面
定款は単なる社内規則ではなく、様々な場面で提出が求められる重要書類です。
- 【法人設立時の届出】税務署への法人設立届出書には定款の写しが必要です。
- 【金融機関との取引】法人口座開設や融資申し込み時に提出が求められます。
- 【行政機関への申請】助成金申請や許認可申請時にも定款写しや原本証明が必要な場合があります。
- 【株主・債権者の閲覧請求】会社法により、株主や債権者は営業時間内に定款の閲覧や謄本交付請求が可能です。
紛失時の対応方法
万が一定款を紛失した場合の対応についても理解しておく必要があります。
- 設立後20年以内であれば、公証役場で「原始定款」の謄本を取得可能です。
- 法務局で設立時の登記申請書類(定款を含む)は5年間閲覧できるため、再作成の参考にできます。
- 登記や許認可申請など、定款変更が登記されている場合は、その内容に基づく議事録が法務局に保存されている場合があります。
- 会社設立を専門家に依頼している場合は、専門家が重要書類を管理している可能性があるため、問い合わせて確認しましょう。
事例:定款の管理・再発行の流れ
設立後数年経過し、会社の融資申込時に定款の提出が求められたが、原本が見つからない場合、まず公証役場に相談します。設立からまだ10年未満であれば「原始定款」の謄本発行が可能です。その後、社内で現行定款の内容と相違がないか確認し、必要なら最新の定款を作成します。専門家に依頼した場合は、その事務所に問い合わせることでスムーズに再発行手続きを進めることができます。
定款変更・管理上の注意点
定款の内容を変更する際は株主総会の特別決議が必要となり、変更内容に応じた登記を法務局へ申請します。原始定款の内容自体は変更できず、変更後の「現行定款」を新たに保管する必要があります。変更後は、最新の定款を必ず本店・支店に備え付け、必要時すぐに提出できるよう管理体制を整備することが大切です。
まとめ
定款は会社運営の根幹を担う重要書類であり、会社法により本店・支店で備え付ける義務がある一方、保管方法自体は会社の実情に合わせて柔軟に選択できます。金融機関や行政機関との取引でも頻繁に定款提出が求められるため、紛失や劣化に備え、厳重かつ効率的な管理方法を徹底することが重要です。紛失時や変更時にも慌てず、定款の再発行ルートや閲覧請求の制度を活用しましょう。会社運営に不可欠な定款管理は、経営者・担当者が日常的に意識したい事項です。