外国人起業家のための定款作成ポイント|在留資格手続きとの関連
はじめに
近年、日本で起業を目指す外国人の増加に伴い、「会社設立」と「在留資格(経営・管理ビザ)」に関する相談が増えています。特に、会社設立の第一歩として「定款」の作成は重要ですが、在留資格との連動や政府の最新規則への対応も求められるため、慎重な準備が必要です。
外国人が会社設立時に注意すべき定款作成のポイント
会社の定款は「会社の憲法」とも言われ、会社の基本事項を定める非常に重要な書類です。外国人起業家が日本で株式会社や合同会社を設立する際には、以下の点に特に注意が必要です。
- 商号(会社名)、本店所在地、事業目的、資本金額、発起人情報、役員構成などの基本事項を網羅します。
- 株式会社設立の場合は、公証人による定款認証が必要です。合同会社の場合は認証不要です。
- 電子定款の活用も可能で、コストや効率の面で有利ですが、電子署名や準備に一定の知識が必要です。
また、事業目的の記載や経営・管理ビザ審査の観点から「安定性・継続性」を強調した内容にするのが望ましいとされています。
在留資格「経営・管理」と定款内容の関連性
外国人が事業経営を行う場合は「経営・管理」ビザ取得が必須となります。この審査で重視されるポイントは、会社実態や事業所の有無、事業内容の具体性、資本金要件(現在は500万円以上、今後引き上げ予定あり)、雇用要件(今後強化の予定)などです。
- 定款の事業目的欄は、「安定した収益が見込める事業内容」「適切な事業所の確保」を説明できる内容にします。
- 資本金額や事業所所在地など、法務局登記時に必要な事項と、出入国在留管理庁の経営管理ビザ審査事項を一致させることが大切です。
- 定款作成時から「経営・管理」ビザ取得を見据えて準備すると、後々の審査や追加書類提出が円滑になります。
実際の流れと注意点
たとえば、インド出身の起業家がIT関連事業を始めるケースでは、定款の事業目的を「ITサービスの開発および販売」と広めに設定した上で、資本金額は500万円以上とし、品川区などに事業拠点を用意する流れが一般的です。
- 発起人が日本の銀行口座を持たない場合は、協力者に一時的に取締役になってもらい資本金振込を完了し、会社設立後に発起人自身が経営管理ビザを取得するという方法が多く利用されています。
- 法務省や東京都(特区制度等)では創業支援による短期在留資格の全国拡大など、起業支援が強化されています。
- 将来的には資本金・雇用要件の強化など、審査基準が厳格化される見込みです。最新情報は必ず政府・公的機関サイトで確認してください。
まとめ
外国人起業家にとって、会社設立に際しての「定款の作成」は、法的根拠だけでなく在留資格取得・事業の安定運営にも直結する重要事項です。定款作成時は必ず政府の最新情報を確認し、具体的な事業内容・資本金・事業所等を明確にすること、電子定款や公証人認証など効率的な手続きも活用しましょう。専門家への相談も有効です。