会社設立時の事業目的を広く書くメリット・デメリットとは?定款記載のポイント

会社設立の際には、「定款」に会社の事業目的を記載することが法律で義務付けられています。事業目的は、会社の活動範囲を示し、さまざまな場面で重要な役割を果たします。特に、事業目的を幅広く記載することで、将来の事業展開に柔軟性を持たせることができます。しかしながら、広すぎる目的記載には思わぬリスクも存在します。ここでは、定款作成時に事業目的を広く記載するメリット・デメリットについて、最新の公的機関情報や専門家観点から解説します。

会社設立時、「定款」に事業目的を記載することは絶対的記載事項とされていて、記載がない場合は定款として認められません。事業目的は、会社が「何をする会社なのか」を第三者に明示し、事業の適法性・営利性・明確性が求められます。

  • 新規事業の展開が容易に
    将来的に多角化や新規事業を始めたい場合、初めから幅広い目的を設定しておけば、定款や登記の変更手続きが不要となり、コストや手間を削減できます。
  • 事業拡大の柔軟性
    幅広い目的を掲げていれば、急な市場変化にも柔軟に対応しやすくなり、会社の成長に資する場合があります。
  • 多角的な収益源の確保
    複数の事業分野を持つことでリスク分散が図れ、投資家や金融機関からも安定感や成長性を評価されるケースがあります。
  • 人材・施設などリソースの活用効率向上
    異なる事業間で資源を共有しやすく、コスト最適化にも役立つ場合があります。
  • 会社の信頼性が低下する恐れ
    目的が多すぎると「何を主とした会社かわからない」「何でもやります会社」という印象となり、取引先や金融機関からの信頼性が低下する場合があります。
  • 事業内容の審査で疑問を持たれる
    登記官による審査や金融機関口座開設時などで、「本業は何か」が分かりにくくなり、追加書類や説明を求められたり、審査が滞るリスクが高まります。
  • 目的の曖昧さから法的トラブルの可能性
    事業目的が具体性や明確性を欠いていると、登記申請が認められない場合や、許認可申請の際に問題となるケースがあります。
  • 会社のブランディングやPR上の不利益
    事業内容が広すぎると、会社の専門性や強みを打ち出しづらくなり、集客・採用・ブランディングで不利益が生じることがあります。

実際に、飲食業をメインに設立した会社が将来的なネット通販事業も視野に入れて「物品販売業」や「Webサービス提供業」などを追加していたことで、事業拡大時に手続きが不要となった事例があります。一方、目的を多数羅列した結果、金融機関からの口座開設時に「本業は何か」と念入りなヒアリングが入り、口座開設まで通常より時間がかかったケースも存在します。

  • 適法性(法律違反でないこと)
  • 営利性(利益を追求する事業)
  • 明確性(誰が見ても分かる具体的な内容)
    これらは法務省や経済産業省等の公的機関による会社法の指導・解説でも繰り返し案内されています。

会社設立時の事業目的を広く記載することは、将来の事業拡大や急な環境変化への備えとして有効です。しかし、目的を広げすぎると、会社のブランディングや信頼性の低下、各種審査での説明負担増加などデメリットにも配慮が必要です。定款を作成する際は、会社の本来の事業と今後展開したい事業を整理し、適切な範囲で具体的かつ明確な記載を心がけましょう。公的機関の案内や専門家への相談も活用することで、安心して会社設立の手続きに進むことができます。