定款で決められる「会社の目的」書き方のコツと注意点

株式会社や合同会社など、新しい会社を設立する際には必ず「定款(ていかん)」を作成する必要があります。定款には会社の基本的なルールを定めますが、その中でも特に重要なのが「会社の目的」です。会社の目的は、会社がどのような事業を行うのかを示す部分であり、将来の事業展開や許認可の取得にも深く関係してきます。

この記事では、「会社の目的」の書き方について、役立つコツと注意点を解説します。

なお、記事の内容は「法務省」や「経済産業省」などの公的機関が公表している情報を基に整理しています。最終的な判断については、専門家へのご相談をお勧めします。


会社の目的とは、会社が営む事業の内容を具体的に示したものです。会社法(会社法第27条)では、定款に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」の一つとされています。つまり、目的が記載されていなければ定款が無効となり、会社の設立登記は認められません。

登記にあたっては法務局が審査を行い、不明確すぎる目的や、違法な事業内容は認められません。そのため、記載の仕方には注意が必要です。


1. 明確かつ具体的に書く

会社の目的は、事業の範囲がわかるように明確かつ具体的に書く必要があります。たとえば「物品販売業」と書くだけでは曖昧すぎるため、「衣料品・雑貨の企画、製造、販売及び輸出入」というように、何を取り扱うのかをわかりやすく記載すると良いです。

2. 将来性を考慮して記載する

将来的に新しい事業を開始したいと考える場合、その事業をスムーズに行えるようにあらかじめ目的に盛り込むことが重要です。ただし、無関係な事業を詰め込みすぎると、事業内容が広がり過ぎて本来の事業分野が分かりにくくなるためバランスが必要です。

3. 許認可が必要な事業は慎重に

風俗営業や建設業、宅地建物取引業など、一部の業種には許認可が必要です。定款に書く目的が許認可要件を満たしていない場合、申請が却下される恐れがあります。特に建設業の場合は「建設工事の請負及び施工」といったように、業種に応じた具体的な記載が求められるケースがあります。


曖昧すぎる表現

「事業全般」や「各種事業の運営」などの表現は抽象的すぎて受理されません。必ず具体的に示す必要があります。

公序良俗に反する事業

法律に違反する行為や社会的に不適切な表現を目的にすることはできません。

記入漏れによるトラブル

例えば将来インターネット販売を行いたくても、定款に目的として記載がなければ銀行口座の開設や融資の申請で不便が生じることがあります。事業拡大の可能性がある場合は、あらかじめ余裕を持った目的を設定しておくことが大切です。


例えば、30代の起業家が「アパレル関係のECショップ」をスタートする場合を考えてみます。

最初はネット販売が中心ですが、将来的に自社ブランドの開発や実店舗経営にも展開したい計画があります。

この場合、定款での目的記載例としては、

  • 衣料品・雑貨の企画、製造、販売及び輸出入
  • インターネットを利用した通信販売業
  • ファッション関連イベントの企画及び運営

といった形で事業の広がりを前提に記載するのが望ましいでしょう。最初から「飲食業」など関係性の薄い事業まで入れてしまうと冗長になり、事業計画に一貫性がなく見えてしまうため、今後の事業展開を想定しながら現実的な範囲でまとめることがポイントです。


  1. 会社で実際に行う事業をリストアップする
  2. 5年後、10年後に展開したい事業を検討する
  3. 許認可が必要な業種は省庁のガイドラインを確認する
  4. 専門家に確認して、登記できる表現かどうかを確認する

このように準備すると、後で目的変更をしなければならないリスクを減らすことができます。


会社設立時の「会社の目的」は、ただの形式ではなく、会社の将来に直結する重要な要素です。曖昧さを避け、現在の事業と将来の展開を踏まえた内容にしておくことで、登記手続きがスムーズになり、事業拡大の際にも役立ちます。

また、許認可が必要な業種では、関連省庁が提示している必要な文言や表現を事前に調べておくことが不可欠です。会社法や省庁の公式情報を参考にしつつ、迷う点があれば行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。

会社の目的は、まさに「会社の未来を方向づける羅針盤」と言える部分です。しっかりと検討して定款に盛り込みましょう。