タイトル:持分会社と株式会社の相続対策比較|承継の違いと重要ポイントを徹底解説
はじめに
会社の事業承継や相続対策は、中小企業や資産管理会社の経営者にとって非常に重要なテーマです。特に「株式会社」と「持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)」では、承継方法や相続時の対応が大きく異なります。本記事では、それぞれの会社形態における相続対策の違いやポイントについて、検索でも多く使われるキーワードを交えて丁寧に解説します。信頼性を高めるため、政府や専門機関の情報も参考にしています。
株式会社の相続と承継の特徴
株式会社においては、経営者が保有している「株式」が相続財産となります。経営権を握るためには過半数の株式、また会社の組織変更など重要事項には3分の2以上の議決権が必要です。そのため、遺産分割により株式がバラバラに相続されると経営支配が困難になる恐れがあるため、後継者に株式を集中させることが一般的な相続対策となります。
- 株式は原則自由に譲渡できる(定款で制限可能)
- 株主が間接的に経営に参加する
- 会社の信用力が高く、資金調達も柔軟
- 株式の相続税評価は「非上場株式方式」などを用いる
- 法人版事業承継税制の特例が活用でき、納税猶予や免除の制度もある
【事例】
父が経営する株式会社を次男が継ぐことになり、遺言によって全株式を次男が相続。他の相続人には現金等を配分することで、経営権の集中を実現し、安定した事業承継ができました。
持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の相続と承継の特徴
持分会社は、社員(構成員)が経営にも直接関わる仕組みが特徴です。社員が死亡した場合、原則として社員の地位を失い、持分そのものではなく、「払戻請求権」(会社の純資産の払い戻しを請求できる権利)が相続されることになります。
- 持分の相続は、定款に承継の定めがある場合のみ可能
- 原則としては相続人は「払戻請求権」を取得
- 出資と経営権が一体であるため、社員の地位の承継には全社員の同意など厳しい条件も
- 持分の評価は原則「払戻請求権」として計算、定款で承継できる場合は株式会社と同様の評価
- 設立や維持コストが低いが、社会的信用力や資金調達力は株式会社より劣る傾向
【補足ポイント】
合同会社の場合、定款で「持分の相続による承継」を定めていないと、出資者が亡くなると会社が消滅リスクもあります。また、複数人の相続人がいると持分の分割や承継手続に全員の合意が必要など、注意が求められます。
【事例】
合同会社の社員であったAさんが亡くなった際、定款に承継規定がなく、相続人は持分に代わる払戻請求権のみを取得。結果的に相続人が会社経営に直接関与できない形となりました。
会社形態ごとの相続対策の重要ポイント
比較項目 | 株式会社 | 持分会社(合同会社等) |
---|---|---|
相続財産 | 株式 | 持分または払戻請求権 |
譲渡・承継のしやすさ | 原則自由(定款制限可) | 定款や社員全員の同意必要 |
相続税評価方法 | 非上場株評価方式 | 原則「払戻請求権」評価、定款で承継なら株式同様 |
会社継続性 | 出資者死亡でも継続容易 | 定款内容による、死亡で消滅リスクも |
社会的信用力 | 高い | 相対的に低い傾向 |
公的な支援と活用できる制度
株式会社では、中小企業庁の「法人版事業承継税制」により、事業承継時の相続税や贈与税の納税猶予・免除を全面的に受けることができます。現在は2026年3月31日までの特例措置が利用可能です。
持分会社でも会社形態の工夫や定款の定めによって承継対策の幅を広げることができますが、制度面では株式会社の方がより手厚い優遇がある点に留意しましょう。
まとめ
会社の相続・承継対策では、株式会社と持分会社で大きな違いがあります。
株式会社は株式の集中承継による安定経営を目指しやすく、公的な税制優遇制度も充実しています。一方、持分会社は設立コストや運営の柔軟性がある反面、承継・相続で手続きが煩雑になることや、定款内容よって承継方法が大きく左右される点が特徴です。
どちらの会社形態を選ぶ場合も、事前に定款の内容や相続・承継対策の制度を踏まえ、遺言や民事信託、贈与などの手法も含めた総合的なプランニングが求められます。「経営権の集中」「円滑な事業承継」の観点から、専門家に早めに相談することをおすすめします。