中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)を利用した節税対策の仕組み

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、取引先倒産への備えと節税対策を同時に実現できる制度として、多くの中小企業経営者に注目されています。
しかし、「本当に節税になるのか」「解約時に税金が増えるのではないか」と不安を感じる方も少なくありません。

この記事では、中小企業倒産防止共済の基本的な仕組み、節税のポイント、解約時の注意点までを、公的機関の情報を踏まえて整理して解説します。

中小企業倒産防止共済(正式名称:経営セーフティ共済)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度です。
取引先が倒産し売掛金の回収が困難になった場合に、無担保・無保証人で、納付した掛金総額の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れができるのが大きな特徴です。

  • 制度の目的:取引先の倒産に伴う連鎖倒産や急激な資金繰り悪化を防ぐこと。
  • 対象:中小企業者・個人事業主等で、一定の資本金・従業員数の範囲内であれば加入可能です(業種ごとに基準あり)。

万一の備えとしての機能に加えて、「掛金を全額損金(または必要経費)に算入できる」という税務上のメリットが、経営者の関心を集めています。

掛金の基本条件

掛金は次のような条件で設定・積み立てすることができます。

  • 掛金月額:月5,000円~20万円の範囲で5,000円単位で選択可能。
  • 積立限度額:掛金残高が800万円に達するまで納付可能。
  • 納付方法:原則として毎月27日に口座振替。前納(前払い)も可能。

掛金の損金算入・必要経費算入

掛金の税務上の取り扱いは、法人か個人かで次のようになります。

  • 法人:納付した掛金は、租税特別措置法に基づき、その事業年度の損金として全額算入可能。
  • 個人事業主:事業所得に係る部分について、掛金全額を必要経費に算入可能。事業所得以外(不動産所得など)には使えません。

また、掛金を前納した場合でも、原則として前納期間が1年以内なら支払った年(事業年度)の損金・必要経費に算入できます。
1年を超える前納分は、決算期ごとに期間按分して損金・必要経費に算入する必要があります。

令和6年以降の重要な改正点(再加入時の制限)

令和6年10月1日以降に共済契約を解約し、その後再加入した場合、解約日から2年間に支払う掛金は損金・必要経費に算入できないという制限が設けられています。
いわゆる「解約→すぐ再加入→再度節税」というスキームに対して、税務上の歯止めがかかった点は、出口戦略を考えるうえで非常に重要です。

節税の基本的な考え方

経営セーフティ共済の「節税効果」は、掛金を支払った時点で損金・必要経費に算入できることにより、課税所得を一時的に圧縮できる点にあります。
その一方で、解約して解約手当金(解約返戻金)を受け取る際には、その全額が益金(法人)又は事業所得などの収入に算入され、課税対象となる点を理解しておく必要があります。

  • 掛金支払時:利益が出ている年に掛金を増額すれば、その分だけ課税所得を減らし、法人税・所得税等を抑えられます。
  • 解約手当金受取時:受け取った金額は益金(法人)または事業所得等(個人)として課税されますので、解約するタイミングと利益水準の調整がポイントです。

具体的なイメージ事例

以下は、イメージ事例です。

  • 製造業のA社(資本金1,000万円、従業員20名)が、毎月20万円、5年間掛金を支払ったケースを想定します。
  • 掛金総額は、20万円×12か月×5年=1,200万円ですが、制度上の積立限度額は800万円のため、途中で上限に達します。

この間、A社は毎期掛金全額を損金算入しているため、毎年の法人税負担を軽減できます。
その後、将来設備投資で大きな減価償却費が見込まれる年度に解約して解約手当金を受け取ることで、解約手当金の益金計上と減価償却費の損金計上を相殺するような形で、トータルの税負担を平準化することが可能です。

解約手当金と解約タイミング

共済契約を解約した場合には、掛金納付月数に応じて解約手当金が支給されます。

  • 12か月未満:解約手当金はゼロ(掛け捨て)。
  • 12か月以上40か月未満:掛金総額の8割以上が解約手当金として戻る(みなし解約などの理由により割合は異なる)。
  • 40か月以上:自己都合解約でも掛金総額の100%が戻る(機構解約等では95%)。

解約手当金は、法人では「雑収入」等として益金算入、個人事業主では事業所得などの収入として扱われるのが一般的であり、いずれも課税対象である点に注意が必要です。

そのため、解約は以下のようなタイミングを意識すると、節税効果を最大限活かしやすくなります。

  • 大きな赤字が見込まれる年度に解約し、解約手当金の益金を赤字と相殺する。
  • 設備投資・退職金支給など、多額の損金発生が予定される年度に解約する。

「節税になる=税金がゼロになる」わけではない

経営セーフティ共済は、あくまで「課税時期の繰延べ」であり、トータルとして税金が完全になくなるわけではありません。
利益が大きい年に掛金を支払い、将来、利益が少ない(あるいは赤字)年に解約手当金を受け取ることで、税負担の平準化・資金繰りの安定化を図るという性格が強い制度です。

解約と再加入に関する最新の制限

前述のとおり、令和6年10月1日以降は、解約後2年間に支払う掛金が損金・必要経費に算入できないルールが導入されています。
これにより、短期的な「駆け込み節税→すぐ解約→また加入」というスキームは、税務上のメリットが大きく制限されるため、より長期的な視点で運用計画を立てることが重要です。

個人事業主の場合の注意点

個人事業主が加入する場合、掛金は事業所得の必要経費として認められますが、不動産所得など他の所得区分には利用できません。
また、解約手当金は原則として事業所得などの収入に算入されるため、解約時に所得税・住民税・事業税などが増加する点も踏まえたうえで、解約年度の所得見通しを検討する必要があります。

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、取引先倒産リスクに備えつつ、掛金全額を損金・必要経費に算入できる点で、非常に使い勝手の良い制度です。
一方で、解約時に解約手当金が全額課税対象となること、令和6年10月1日以降の解約・再加入に関する損金算入制限など、節税目的で活用するうえで押さえるべきポイントも多く存在します。

  • 掛金は月5,000円から20万円まで、最高800万円まで積立可能。掛金全額が損金・必要経費算入の対象となる。
  • 解約手当金は益金または事業所得等として課税対象となるため、解約のタイミングが節税効果を大きく左右する。
  • 制度改正により、解約後2年間の再加入掛金は損金算入できないため、長期的な出口戦略の設計がより重要になっている。

実務上の活用にあたっては、決算内容や今後の投資・退職金支給予定などを踏まえ、税理士や専門家と相談しながら、自社にとって最適な掛金設定と解約タイミングを検討することをおすすめします。