決算前にチェック！交際費・会議費の正しい使い方で法人税を節税するポイント
サイト管理者はじめに
決算が近づくと、「この飲食代は交際費なのか会議費なのか」「どこまで経費にできるのか」というご相談が増えることが多いです。
交際費と会議費の区分は、法人税額に直結するため、正しく理解しておくことがとても大切です。
交際費とは？基本的な考え方
交際費等とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先・仕入先など事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用」と定義されています。
つまり、取引先との飲み会、ゴルフ接待、贈答品など、取引関係の維持・拡大を目的とする支出が広く含まれるイメージです。
交際費等は原則として全額が損金不算入ですが、中小企業等には一定額まで損金算入できる特例が設けられています。
また、飲食費については「一定割合を損金算入できる制度」と「定額控除限度額」のいずれかを選択して計算する仕組みとなっています。
会議費とは？交際費との違い
会議費は、社内外の会議・打合せを行うために必要な費用（会議室代、資料代、会議中のお茶・弁当など）を処理する勘定科目です。
事業に関係する会議・打合せであり、その目的・内容が明らかであれば、原則として全額を損金算入することができます。
一方で、同じ飲食であっても、目的が「接待・懇親」であれば交際費、事業上の協議や打合せが中心であれば会議費、というように目的で区分される点が重要です。
そのため、「会議と称して実態は単なる飲み会」のような場合は、税務調査で交際費と判定されるリスクがあることに注意が必要です。
10,000円基準と交際費から除かれる飲食費
国税庁は、交際費等から除かれる費用として、次の飲食費を掲げています。
- 得意先・仕入先など事業に関係のある者との飲食費であること
- その支出額を参加人数で割った1人当たり金額が10,000円以下であること
- 専ら自社の役員・従業員・その親族だけの飲食ではないこと
この条件を満たす飲食費は「交際費等から除かれる」ため、原則として全額を損金算入できます。
この規定は、令和6年3月31日以前は1人当たり5,000円基準でしたが、現在は10,000円に引き上げられている点も押さえておきたいポイントです。
さらに、この10,000円基準を適用するためには、次の事項を記載した書類を保存しておくことが要件とされています。
- 飲食の年月日
- 相手先の氏名または名称・関係
- 参加人数
- 金額、飲食店名・所在地（又は支払先）
- その他、飲食費であることが分かる事項
単に領収書を保存するだけでなく、これらの事項を社内で記録しておくことで、税務調査時の説明がスムーズになります。
交際費と会議費の区分で節税につなげる実務ポイント
交際費か会議費かの判断は、「まず交際費に該当するかどうか」を検討し、該当しない場合に会議費等とするのが実務上の考え方として有効です。
特に飲食費では、1人当たり10,000円以下の範囲であれば、会議の実態がある場合に会議費として処理しやすくなり、結果として法人税の負担軽減につながるケースがあります。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
- 例：取引先2社と自社担当者で、新商品企画に関する打合せを行い、会議室で軽食と飲み物を提供した。1人当たりの飲食費は8,000円程度だった。
→ 会議の目的・内容・参加者・時間帯などが明らかで、実態が打合せであれば、会議費として処理し得る余地があります。
このような場合でも、議題・出席者・会議時間等を記録した議事メモや社内フォーマットを残しておくと、会議費としての説明がしやすくなります。
一方で、次のような支出は、会議費ではなく交際費に分類される可能性が高いと考えられます。
- 実質的に懇親が中心で、議題・協議内容が曖昧な飲み会
- 深夜の高額な飲食店での接待で、事業に関する具体的な打合せの実態が乏しいケース
裁判例でも、単なる人脈形成だけを目的とした接待費は、事業との関連性が認められず、交際費等としても否認される可能性が指摘されています。
目的・実態の説明ができるよう、日頃から記録と運用を整えておくことが、節税と税務リスク軽減の両方に役立ちます。
まとめ
交際費は、得意先などに対する接待・贈答等のために支出する広い概念であり、原則として全額が損金不算入となる一方、中小企業等には一定の損金算入の特例があります。
一方、会議費は事業に関する会議・打合せに要する費用であり、正しく区分することで、結果的に法人税額を抑える効果が期待できます。
令和6年度以降、1人当たり10,000円以下の飲食費が交際費等から除外される範囲として認められており、記録要件を満たせば全額損金算入できる点は、大きな実務上のポイントです。
決算前には、自社の交際費・会議費の処理が適切かを見直し、必要に応じて税理士や専門家に相談しながら、無理のない範囲での節税と税務リスクのバランスを取っていくことが重要です。
