【法人設立前に知っておきたい】会社形態による節税対策の基本

これから起業・法人設立を検討されている方にとって、「どの会社形態を選ぶか」は、将来の税負担や手残り額に大きく影響する重要なポイントです。
同じ売上・同じ利益でも、「個人事業主」「株式会社」「合同会社」など会社形態の違いによって、適用される税率や使える節税手法が変わってきます。
この記事では、公的情報や信頼性の高い資料を参考に、会社形態ごとの税負担の違いと、法人設立前に押さえておきたい節税の基本ポイントをわかりやすく解説します。


個人事業主と法人では、そもそも課税される税目と税率の考え方が異なります。

  • 個人事業主
    • 所得税(超過累進税率:5%~45%)+住民税(ほぼ一律10%)+個人事業税などが課税されます。
    • 所得が増えるほど税率も段階的に上がる「累進課税」の仕組みです。
  • 法人(株式会社・合同会社など)
    • 法人税・法人住民税・法人事業税などが課税されます。
    • 普通法人の法人税率は原則23.2%で、中小法人は年800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用される仕組みがあります。

このように、個人は「所得が増えるほど高い税率」、法人は「一定の税率+軽減措置」という構造が基本となります。


「どのくらい利益が出たら法人化した方が有利になりやすいか」は、起業前に必ず押さえておきたいポイントです。

  • 所得税は、課税所得が900万円を超えると33%、4,000万円超で45%まで上がる可能性があります。
  • 一方、資本金1億円以下の中小法人の法人税は、年800万円以下の所得部分15%、800万円超部分23.2%という水準で頭打ちです。

そのため、

  • 課税所得がある程度大きくなる(一般的に年800万~900万円超が一つの目安)と、法人税率の方が有利になりやすいといわれています。
  • ただし、法人になると社会保険料の会社負担や均等割(赤字でも発生する法人住民税)が生じるため、「税金だけでなく社会保険も含めたトータル負担」で検討することが重要です。

このように、単純な税率だけでなく、事業規模・家族構成・社会保険の負担も踏まえて会社形態を比較する必要があります。


ここからは、よく選ばれる「個人事業主」「株式会社」「合同会社」のそれぞれで代表的な節税の考え方を整理します。

個人事業主の場合のポイント

  • 経費計上の範囲を適切に把握し、事業に関連する支出を漏れなく経費にすることが基本です。
  • 青色申告特別控除や専従者給与など、個人事業主向けの制度を活用することで、一定の所得までは十分な節税が可能です。
  • ただし、所得が一定以上になると、累進税率により税負担が重くなりやすい点がデメリットとなります。

株式会社・合同会社(法人)の場合のポイント

  • 法人の利益に法人税等が課税され、代表者には「給与(役員報酬)」として支払うことで、法人と個人それぞれに課税が分かれます。
  • 役員報酬には給与所得控除が適用されるため、同じ金額を個人事業の所得として受け取る場合と比べて、個人側の税負担を抑えられる可能性があります。
  • 中小法人の場合、所得800万円以下の部分の軽減税率(15%)や、欠損金の繰越控除(原則10年)など、法人独自の制度も節税に寄与します。

なお、合同会社も株式会社と同様、税金の仕組みは「普通法人」として扱われるため、法人税率や基本的な節税の考え方は共通です。


税金だけを見て会社形態を決めるのではなく、「将来の事業展開」や「資金調達」「信用力」なども含めて考えることが大切です。

  • 株式会社
    • 社会的信用力が高く、金融機関からの融資や取引先との契約で有利に働くケースが多いです。
    • 将来、株式を利用した事業承継や相続対策を検討しやすい形態です。​
  • 合同会社
    • 設立費用や維持コストを抑えやすく、内部の意思決定も柔軟に行えるのが特徴です。
    • 税務面では株式会社と大きな差はなく、少人数での起業・スタートアップで選ばれることが増えています。
  • 個人事業主からの法人化(法人成り)
    • 売上や利益が増えてきたタイミングで法人化することで、税率面・社会保険・家族への給与支払いなどを含めた総合的な節税が期待できます。
    • 一般的には「年間の利益が一定額を超えてきたか」「今後も事業を拡大していくか」が法人化を検討する目安となります。

このように、会社形態ごとの特徴と、税務・社会保険・信用力を総合的に比較しながら検討することが、失敗しない会社設立の第一歩です。


会社形態による節税対策を検討する際は、まず、個人事業と法人で「税率の仕組み」が大きく異なることを理解することが重要です。
個人は累進課税で所得が増えるほど税率が上がるのに対し、法人は一定税率+軽減措置があるため、一定以上の利益が見込まれる場合は法人化による節税効果が期待できます。

ただし、法人には社会保険料の会社負担や均等割など、税金以外のコストも発生しますので、「トータルの負担」と「将来の事業展開」を踏まえた会社形態選びが欠かせません。
個々の状況によって最適な形態や節税方法は異なりますので、実際の設立前には、国税庁などの公的情報を確認しつつ、専門家に相談して具体的なシミュレーションを行うことをおすすめします。