起業塾とインキュベーション施設を活用して成功した外国人起業家のビザ取得事例

日本で事業を立ち上げたいと考える外国人の方にとって、最初の大きな課題が「ビザの取得」です。特に、事業をこれから始めようとする段階では、従来の「経営・管理」ビザの要件(事務所確保や資本金500万円以上など)を満たすことが難しい場合があります。
こうした課題を解決する制度として近年注目されているのが、「スタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)」です。この制度を活用し、起業塾やインキュベーション施設の支援を受けて成功した事例が増えています。

経済産業省が実施する「外国人起業活動促進事業」(通称スタートアップビザ)は、外国人が日本で起業準備を行うための最長1年(現在は最大2年まで延長可能)の特例在留資格を認める制度です。地方自治体が支援団体として認定を受けており、起業家はこれらの団体の支援のもと事業計画の準備を進めることができます。

この制度は、国家戦略特区版(内閣府管轄)と経済産業省版の2種類がありましたが、2025年1月からは全国で統一的に運用される仕組みに変わりました。これにより、地域を問わず柔軟にビザ申請が行えるようになりました。

スタートアップビザ制度を利用する上で重要なのが、自治体や大学、民間のインキュベーション施設による支援です。これらの施設では、事業計画書作成の指導、資金調達のアドバイス、日本の法制度や会計の基礎知識セミナーなどが行われています。
たとえば、神戸市ではJETRO神戸内に専用の窓口を設置し、外国人起業家向けに個別相談やメンター制度が提供されています。近年では、IT・医療・環境分野を中心に海外起業家の支援実績が増加しています。

また、横浜市ではコワーキングスペースを正式な事業所要件として認める制度を導入し、初期費用を抑えた事業立ち上げをサポートしています。この取り組みは、在留資格取得の要件緩和にもつながり、より多様な起業形態を可能にしています。

たとえば、東南アジア出身のAさんは、大学卒業後に東京都内の起業塾プログラムに参加しました。約半年間のプログラムで、日本のビジネス文化や法制度、資金調達方法を学びながら、同時にスタートアップビザを取得しました。
Aさんは、ITを活用した観光支援アプリ事業を構想し、自治体の起業支援担当者からのメンター支援を受けながら事業計画をブラッシュアップしました。その結果、起業準備期間中に国内ベンチャーキャピタルから出資を受け、「経営・管理」ビザへ移行し、正式に法人を設立しました。

同様に、関西圏のBさん(欧州出身)は、大学発のインキュベーション施設に入居し、研究者ネットワークを活かした医療関連スタートアップを準備しました。施設が提供する弁護士・税理士・行政書士らの専門家サポートを通じ、在留資格変更手続きをスムーズに完了させています。これらのケースは、スタートアップビザ制度が外国人の実践的な起業の後押しとなっていることを示しています。

成功した外国人起業家にはいくつかの共通点があります。

  1. 自治体の支援制度を早期に調べ、申請要件を正確に把握していること。
  2. インキュベーション施設のメンター制度やネットワークを最大限活用していること。
  3. ビジネスプランを日本の市場環境に適合させ、実行可能性を丁寧に説明できること。
    スタートアップビザの審査では、事業の実現性や社会的意義が重視されるため、書類の正確さと具体性が求められます。

スタートアップビザの申請手続きは、事業計画の書式や自治体による認定書の取得など、一般的なビザ申請より複雑です。行政書士に相談することで、在留資格要件や添付書類の整備、自治体との調整をスムーズに進めることができます。特に、後に「経営・管理」ビザへ切り替える場合には、法人設立書類や資本金要件に基づくサポートが有効です。

スタートアップビザは、外国人起業家に日本での挑戦の機会を広げる制度であり、インキュベーション施設や起業塾などの支援体制と組み合わせることで、成功への道が開かれます。これから日本で事業を始めたい方は、まず自治体や支援団体のサポート内容を確認し、専門家とともに計画的な準備を進めることが大切です。