外国人代表取締役を置く際に必要な在留資格と登記手続き

近年、日本で会社を設立し、外国人が代表取締役として経営に携わるケースが増えています。海外とのビジネスを展開しやすい環境が整う一方で、外国人が代表取締役として就任する場合には、「在留資格」と「登記手続き」に関する正しい理解が不可欠です。この記事では、法務省や経済産業省の公的情報に基づき、外国人代表取締役を任命する際の注意点と手続きを詳しく解説します。

外国人が日本で会社の経営や管理を行う場合、出入国在留管理庁が定める「経営・管理」の在留資格が必要になります。この在留資格は、外国人が日本において企業を設立し、その経営または管理に従事する際に認められるものです。

  1. 日本で事業の経営・管理を行うこと
    実際に会社の取締役や代表取締役として業務を行う必要があります。
  2. 日本国内に事業所があること
    自宅をオフィスとして使用する場合でも、居住スペースと業務スペースが区別されていることが求められます。
  3. 一定の事業規模を確保すること
    資本金または出資総額が500万円以上、もしくは2名以上の常勤職員の雇用が必要です。
  4. 短期ステイ用の4か月在留資格も存在
    必要な準備(会社設立や事務所賃貸など)のために短期滞在から申請可能です。

一部の自治体(東京都・福岡市・新潟市など)では、外国人起業家向けの特例として「外国人創業活動促進事業」が行われています。この制度では、事前に500万円の資本金などを用意しなくても、自治体に提出する創業計画の確認を受けることで、6か月間の経営・管理ビザを取得できます。

この期間内に、会社設立や事務所開設、資本金準備など、正式な条件を整える手続きが必要です。

外国人が日本の会社の取締役や代表取締役に就任した場合でも、登記手続きは日本人と同様に行えます。法務省によると、代表取締役全員が海外に居住していても登記申請が可能です(法務省民事局)。

  • 就任承諾書または株主総会議事録
  • 印鑑証明書またはサイン証明書(大使館発行可)
  • 住民票やパスポートコピー(本人確認のため)
  • 登記申請書(代表印または署名)

登記は就任日から2週間以内に本店所在地の法務局で申請する必要があり、遅れると過料(100万円以下)が科される場合があります。

以前は、内国株式会社の代表取締役のうち少なくとも1名が日本に住所を有する必要がありましたが、この要件は平成27年3月に廃止されました。そのため、全員が海外居住者でも会社設立登記が可能になっています。

在留資格と登記は別の制度であるため、登記を完了しても自動的にビザが許可されるわけではありません。例えば、海外在住のまま代表取締役に就任しても、その人が日本で経営活動を行う場合は「経営・管理ビザ」の取得が必要です。

一方、在留資格を持たないままでは日本国内での業務遂行(契約締結・取引等)は行えません。したがって、会社設立の計画段階で、在留資格申請と登記準備を同時進行で進めるのが望ましいです。

Q1:日本にいない外国人が代表取締役になれますか?
はい、登記上は可能です。ただし、実際に経営活動を行うために日本へ滞在する場合は「経営・管理ビザ」が必要です。

Q2:ビザの申請はいつすればよいですか?
会社設立登記前でも、4か月の短期在留資格を利用して準備段階から申請できます。

Q3:登記書類に必要な証明書類が自国でしか取れない場合は?
印鑑証明書が取得できない場合は、大使館で発行されるサイン証明書と日本語訳を添付すれば代替可能です。

外国人が日本で代表取締役に就任するには、「経営・管理」の在留資格取得と、法務局での登記手続きが必要です。現在は住所要件も廃止され、海外在住のままでも就任可能ですが、実際に日本で経営活動を行うにはビザの取得が欠かせません。

特に、スタートアップビザなど自治体の支援制度を活用すれば、よりスムーズに起業準備を進めることができます。行政書士など専門家に相談することで、在留資格と登記の両面から確実に手続きを進めることが可能です。