定款自治の範囲とは?会社設立時に自由に決められる事項と決められない事項を徹底解説

会社設立の準備段階で重要な位置を占めるのが「定款」の作成です。とくに、会社法における「定款自治」は会社設立を専門とする行政書士にとって、正確に理解しておくべきポイントです。この記事では、法務省や日本公証人連合会など公的機関の情報に基づき、「定款自治」の範囲、定款で自由に決められる事項・決められない事項について詳しく解説します。

定款自治とは、会社設立時に会社自身が組織運営のルールを自主的に定めることができる原則を指します。いわば「会社の憲法」である定款を、法令の枠内で設計できる自由を保障するものです。この制度によって、事業内容や経営方針に合わせた細やかな運営規定が可能となります。

定款には大きく分けて「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つがあります。会社法27条ほか、法令上の分類に従うと以下の通りです。

  • 絶対的記載事項:必ず記載しなければならず、これが欠落すると定款自体が無効になります。具体例は「会社の目的」「商号」「本店所在地」「設立時出資財産の価額または最低額」などです。
  • 相対的記載事項:記載しなくても定款自体は無効になりませんが、記載しないとその効力が生じない事項です。例えば、「株式の譲渡制限」などが該当します。
  • 任意的記載事項:会社法や他の強行法規に違反しない範囲で自由に記載できる事項です。たとえば「株主総会の招集方法」「取締役の人数」「役員報酬決定の方法」などが含まれます。

会社法は定款自治の範囲を大きく認めていますが、「法律に反しない限り」にという制約があります。すなわち、法律上禁止されている事項や公序良俗に反する内容は記載できません。

自由に決められる具体例

  • 株主総会の招集時期や手続き
  • 取締役の人数や役員報酬の決定方法
  • 株主名簿管理の詳細
  • 配当の決め方
    これらは法の範囲内で自由な定めが可能です。

決められない事項

一方で、次のような事項は自由に定められません。

  • 会社法や他の強行法規で禁止・制限されている事項(例:最低資本金規定の違反、公序良俗に反する規定など)。
  • 法令上必須内容(絶対的記載事項)を欠落させること
  • 組織の根本原則に反する内容
    これらは、会社設立手続きの際も承認されません。

例えば、A株式会社では設立時に「役員報酬は株主総会で決定する」と任意的記載事項として定款に盛り込みました。B合同会社では「社員は2名以上とする」としたいケースもありますが、これらは会社法の基準を超えない限り自由に設計可能です。ただし、設立事例は社名やメンバー構成を現実と異なるものとし、誤解の生じないよう留意しています。

設立後も必要に応じて定款は変更できます。ただし、株主総会特別決議などの定めがあり、会社法に従った適正な手続きが必要です。

定款自治とは、会社が自主的に運営規則を設計できる仕組みですが、法律や公序良俗に反する内容を定めることはできません。絶対的記載事項など必須項目の記載も忘れず、任意的事項で個性や事業方針を反映させることで、会社の円滑な運営が期待できます。会社設立前後の定款設計は、必ず専門家に相談のうえ、最新の法律と公的情報を参照して慎重に進めましょう。