定款に記載する「事業年度」と決算日の実務的な決め方
はじめに
会社設立時に作成する定款には、会社の運営に欠かせない「事業年度」の記載が必須です。事業年度とは会社の会計年度のことで、その最終日が「決算日」となります。決算日は会社の財務状況を締める重要な日付となるため、実務上の決め方には注意が必要です。本記事では、行政書士が会社設立サポートで押さえておきたい、事業年度と決算日の基本的事項から決める際のポイントまで、正確かつ実務的に解説します。
事業年度と決算日の基本理解
事業年度とは、会社の1年間の会計期間を指し、法人税法第13条により1年以内の期間で自由に設定可能です。会社はこの期間における収益や費用を計算し、決算日(事業年度の最終日)に決算報告書を作成します。決算日は月末である必要はなく、例えば6月20日や11月11日といった任意の日付も認められています。しかし多くの企業は事務手続きのしやすさから月末日を選ぶ傾向があります。
法人は決算日から2か月以内に法人税等の申告・納税義務があります。定款に一度記載した事業年度を変更する場合は、株主総会の特別決議が必要です。個人事業主は事業年度が1月1日から12月31日までと税法で定められており、法人のように自由に決められません。
実務的な決め方のポイント
- 事業の繁忙期と決算期の調整
決算期が忙しい時期と重なると経理や申告業務が大変になるため、繁忙期とはずらすことが望ましいです。例えば、建設業や小売業では繁忙期が異なるため、業種によって決算期の最適月を考慮します。 - 税務上のメリットの検討
消費税の免税期間や法人税の納期限など、税務負担のタイミングを踏まえて決算期を設定すると資金繰りの見通しが立てやすくなります。新設法人の場合は設立日から最長で1年間の事業年度も可能なため、設立日の直後すぐの決算にしない方法もあります。 - 官公庁など取引先の会計年度との整合性
官公庁との取引を予定している場合、官公庁の会計期間(通常4月1日から翌年3月31日)に合わせることで書類処理などが効率化されることがあります。 - 周囲の会社の決算期を意識する
日本企業の中で3月決算が多いものの、3月や12月など決算期が重なる時期は会計事務所も繁忙となりやすいため、あえてこれらの月を避けることで事務負担の軽減を図ることが可能です。
定款での記載例と実務注意点
定款の該当条文は「第○条 当会社の事業年度は、毎年○月○日から翌年○月○日までの年1期とする」と記載するのが一般的です。例えば、3月31日決算の場合は「4月1日から翌年3月31日まで」とします。
決算日を月末以外に設定した場合も問題ありませんが、税務上の申告期限や社内の事務処理の都合から月末を選ぶ会社が多いことを認識しましょう。
また、定款に明記した事業年度の変更には株主総会の特別決議が必要であり、変更する場合の手続きや税務署への届出も慎重に行う必要があります。
まとめ
定款に記載する事業年度と決算日の設定は、会社設立時の重要な決定事項です。法人税法により1年以内なら自由に設定可能であり、月の末日以外も認められていますが、実務上は税務負担のタイミングや繁忙期、取引先の会計期間との調整などを考慮して決定するとスムーズです。事業年度の変更は手続きが必要なため最初に慎重に検討しましょう。行政書士としてお客様の立場に立った適切な提案が重要です。