マイクロ法人の役員構成と承継|家族を役員に迎えるメリット・デメリットを徹底解説

近年、「マイクロ法人」というキーワードが注目されています。節税や社会保険料対策、将来の事業承継といった観点から、個人事業主やフリーランスを中心にマイクロ法人を設立するケースが増えています。本記事では、マイクロ法人の役員構成の基本から、家族を役員とする場合の実務上のポイント、そして承継手続きまでを詳しく解説します。

マイクロ法人は、最小限の人数(1名からでも可能)で設立できる株式会社や合同会社のことを指します。主に節税や社会保険料の最低化を目的として設立される法人形態で、従業員を雇わず代表者1人または家族数名で運営されることが多い点が特徴です

  • 株式会社:原則として取締役1名以上で設立可能。監査役などは必須ではありません
  • 合同会社:社員1名から設立可能で、業務執行社員=代表となります。

役員や株主名簿の作成・役員報酬の決定・登記申請など、会社法上のルールに従った手続きが必要です

1. 所得分散による節税効果

家族を役員とすると、役員報酬を複数人で分配でき、累進課税制度のもとで所得税や住民税の総額を抑えることができます

2. 役員退職金制度・小規模企業共済活用

役員を退任する際には退職金を支給でき、受け取る側は退職所得控除を活用できます。また、役員に就任した家族も小規模企業共済に加入可能になり、将来の退職金準備や節税につなげることができます

3. 事業承継を円滑にできる

家族が経営に参画していれば、代表者交替時の連続性や先代の経営ノウハウをスムーズに承継できるメリットがあります

4. 相続税・贈与税対策

役員報酬や退職金として資産を家族へ事前に移転することで、将来の相続税・贈与税対策につなげる事例もあります

1. 社会保険料負担の増加

役員として報酬が年間130万円以上になると、社会保険の扶養から外れ、被用者保険へ加入義務が生じます。これにより社会保険料負担が増すケースがあります

2. 配偶者控除・扶養控除が受けられなくなる

家族役員の収入が一定額を超えると、配偶者控除や扶養控除の適用ができなくなり、世帯全体の税金負担増加につながる場合があります

3. 経営責任の共有・対外的責任

取締役や監査役は会社の法的責任を負う立場です。会社の不祥事や取引先への損害等が発生した場合、役員となった家族も損害賠償責任を問われる可能性があります

4. 名義貸し・形式的役員のリスク

役員報酬を支給するには、実際に会社の経営に従事している実態が必要です。形式的な役職では、税務上認められず経費不算入となるリスクがあります

5. 家族経営による組織活力の低下

家族以外の従業員が増加した際、家族だけで役員を占めると公平性に疑念を持たれる場合や、組織活力の低下、採用面で不利になることもあります

家族を役員にしておくことで、将来的な承継もスムーズに進みやすくなります。

株式の承継

  • マイクロ法人の株式は、贈与または相続、売買等によって次世代に移転可能です。
  • 株式を承継することで法人名義の資産・運営権限も移ります。
  • 相続税・贈与税の評価や納税資金対策も早めに準備するのがポイントです

代表交替・役員交替

  • 代表者が退任し、後継者が新たな代表取締役や業務執行社員に就任するには、株主総会決議や登記変更手続きが必要です
  • 法務局での登記変更、銀行・行政等への名義変更もセットで行います。

注意点

  • 承継時には株主構成や議決権の集中・分散に注意し、家庭内でのトラブルを防ぎましょう
  • 承継計画は早めに作成しておくとスムーズに進行します

例えばAさん(40代・自営業)は、自身が代表取締役としてマイクロ法人を設立し、配偶者と成人した子どもを役員に任命しました。2代目への事業承継時もスムーズに代表交替と株式移譲ができ、節税や社会保険の面でも一部メリットを享受できました。ただし、配偶者の扶養控除が外れ社会保険料が増える等の影響も出たため、事前に税理士等に相談したといいます。

マイクロ法人における役員構成は、最低1名から設立可能で、家族を役員に迎えることで節税や承継の円滑化といった様々なメリットが得られます。しかし、社会保険や税務・法的責任といったデメリットや注意点も存在するため、設立前に必ず各種リスクを確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。特に家族を役員とする場合は、実態に即した経営参画となるよう運営していくことが重要です