会社の資本金増資・減資の手続きとメリット・デメリット

会社経営において「資本金の増資・減資」は、事業拡大や財務改善、税務対策など、さまざまな場面で検討される重要な手続きです。この記事では、資本金の増資・減資の基本的な手続きや、そのメリット・デメリットについて、最新の法令や公的情報をもとにわかりやすく解説します。会社設立後の資本戦略を考える経営者や、これから会社設立を検討している方はぜひご参考ください。


資本金の増資とは、会社が新たに資金を調達し、資本金の額を増やすことを指します。増資には主に「新株発行による増資(有償増資)」と「利益剰余金や資本準備金の組み入れによる増資(無償増資)」があります。

  1. 株主総会または取締役会での決議
    • 定款や会社法の規定に従い、増資内容を決議します。
  2. 払込金の受領・資本金への組み入れ
    • 出資金の払い込みや現物出資を受け、資本金に計上します。
  3. 登記申請
    • 増資後2週間以内に法務局で変更登記を行います。
  4. 登録免許税の納付
    • 増加額の0.7%(最低3万円)の登録免許税が必要です。

減資とは、会社の資本金を減少させる手続きです。目的や方法により「有償減資(株主への払い戻し)」と「無償減資(帳簿上の減少)」に分かれます。

  1. 株主総会での決議
    • 原則として特別決議が必要ですが、欠損補填目的で定時株主総会の場合は普通決議も可。
  2. 債権者保護手続き
    • 官報公告や債権者への催告を行い、1ヶ月以上の異議申立期間を設けます。
  3. 登記申請
    • 減資の効力発生日から2週間以内に法務局で変更登記を行います。
  4. 登録免許税の納付
    • 一律3万円の登録免許税が必要です。

メリットデメリット
返済不要の資金調達ができる税負担が増える可能性がある
会社の信用度が向上する株主構成・影響力が変わる場合がある
財務体質の強化・自己資本比率の向上手続き・登記費用がかかる
新規取引や融資が有利になる資本金規模によっては税制優遇が受けられなくなる

メリットデメリット
累積赤字や欠損金の補填ができる会社の信用力が低下する可能性がある
株主への配当がしやすくなる「みなし配当」として課税される場合がある
節税効果(税制優遇の適用)が期待できる会社の資本が減り、将来の投資余力が減少

A株式会社(資本金1億2,000万円)は、事業規模の見直しと税務負担軽減のため、資本金を1億円未満に減資しました。これにより、外形標準課税の対象外となり、法人税の軽減税率も適用されるようになりました。一方で、取引先から信用力についての質問を受ける場面も増えたため、事前の説明や財務内容の開示を強化することで対応しています。


  • 増資・減資ともに、法務局への登記申請が必須です。
  • 減資の場合は、債権者保護手続きが法律で義務付けられています。
  • 税務や法務の観点から、事前に専門家へ相談することが望ましいです。

資本金の増資・減資は、会社の経営戦略や財務状況、税務対策に大きな影響を及ぼす重要な手続きです。増資は信用力や資金調達力の向上、減資は税務メリットや財務健全化などの効果が期待できますが、それぞれデメリットやリスクも存在します。手続きには法的要件や登記、債権者保護など多くの注意点があるため、必ず最新の公的情報や専門家のアドバイスを参考に、慎重に進めることが大切です。