定款作成のポイントと電子定款のメリット・デメリット
はじめに
会社設立の第一歩として欠かせない「定款作成」。株式会社や合同会社など、法人設立を検討されている方にとって、定款は事業運営の根本ルールとなる重要な書類です。近年は「電子定款」の普及も進み、従来の紙定款と比較してさまざまなメリット・デメリットが注目されています。本記事では、定款作成の基本ポイントと、電子定款の活用メリット・デメリットについて、行政書士の視点から詳しく解説します。
定款作成の基本ポイント
定款とは何か?
定款は、会社の目的や組織、運営方法など、会社の根本的なルールを定めた書類です。会社設立時に必ず作成し、公証人役場での認証(株式会社の場合)が必要となります。作成された定款は、会社設立後も事業運営の指針となり、違反した場合には法的な責任が問われることもあります。
定款に記載すべき事項(会社法に基づく)
定款には、会社法で定められた「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。
- 絶対的記載事項(必ず記載が必要)
- 会社の目的
- 商号(会社名)
- 本店の所在地
- 設立時の出資額またはその最低額
- 発起人の氏名・住所
- 相対的記載事項(定める場合は必ず記載)
- 金銭以外の財産を出資する場合の詳細
- 設立時に発起人が受ける報酬や特別な利益など
- 任意的記載事項(会社独自のルール等、法令に反しない範囲で自由に記載可)
作成時の注意点
- 会社ごとに最適な内容は異なるため、テンプレートをそのまま使うのではなく、設立する会社の実態に合わせて内容を精査しましょう。
- 住所や氏名は、マイナンバーカード等の公的書類と同一表記で記載する必要があります。
- 定款の内容に疑問がある場合は、公証人や専門家(行政書士等)に相談することが推奨されています。
電子定款とは?従来の紙定款との違い
電子定款の概要
電子定款とは、従来の紙に印刷して作成する定款ではなく、PDF等の電子データとして作成し、電子署名を施したうえで認証を受ける方式です。2004年の商業登記規則改正により導入され、現在は広く利用されています。
電子定款のメリット
- 印紙税4万円が不要
- 紙定款の場合、印紙税法により4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款は課税文書に該当しないため印紙税がかかりません。これは会社設立時のコスト削減につながります。
- オンライン申請が可能
- 電子定款は「登記ねっと 供託ねっと」や「法人設立ワンストップサービス」などのオンラインシステムから申請でき、ペーパーレスで効率的な手続きが実現します。
- 書類の保管・管理が容易
- 電子データで管理できるため、紛失や劣化の心配が少なく、再発行や共有もスムーズです。
- 手続きの迅速化
- 電子定款認証は、従来よりも短期間(24~48時間以内)で処理されるケースが増えており、設立スケジュールの短縮が期待できます。
電子定款のデメリット
- 専用ソフトや機材が必要
- 電子署名にはICカードリーダーや電子証明書、専用ソフトが必要です。これらを一から揃える場合、初期コストや手間がかかります。
- 認証済みデータの受け取りに公証役場への出向が必要
- オンラインで申請できても、最終的には認証済みデータ(CD-R等)を公証役場で受け取る必要があります。
- データの訂正・変更が難しい
- 電子定款は一度申請すると、後からデータの訂正や変更ができないため、事前の内容確認が重要です。
- IT操作に不慣れな方にはハードルが高い
- パソコンや電子証明書の扱いに不安がある場合は、行政書士など専門家への依頼やクラウドサービスの活用が推奨されます。
事例紹介
例えば、東京都で飲食業を始める予定のAさん(30代・独身)は、コストを抑えて会社設立を進めたいと考え、電子定款を選択しました。印紙税4万円が不要となり、オンラインで申請できたため、忙しい開業準備の合間にも効率的に手続きを進められました。一方で、電子署名のためのICカードリーダーの準備や、操作方法の習得にやや手間取ったため、次回は行政書士に依頼したいと感じたそうです。
まとめ
定款は会社の基本ルールを定める重要な書類であり、内容の正確性や適法性が求められます。電子定款は、印紙税の節約やオンライン申請による効率化など多くのメリットがありますが、専用機材の準備や操作面でのハードルも存在します。ご自身での作成が難しい場合は、行政書士など専門家に相談することで、スムーズかつ安心して会社設立を進めることができます。