労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許認可の違いと共通点

近年、働き方の多様化や雇用市場の変化に伴い、企業による人材確保の手段もますます多様化しています。その中で、「労働者派遣事業」や「有料職業紹介事業」を新たに始めたいという会社設立のご相談が増えています。両者は似ているように見えますが、事業の仕組みや許認可要件は大きく異なるため、正しい知識が必要です。本記事では、厚生労働省などの公的機関の情報をもとに、両制度の違いと共通点をわかりやすく解説します。

労働者派遣事業とは、派遣会社(派遣元)が自社の社員(派遣労働者)を他の企業(派遣先)に派遣し、派遣先企業の指揮命令のもとで業務に従事させる事業です。派遣会社が雇用主となり、労働者と派遣先企業の間に雇用関係は生じません。

この事業を行うためには、厚生労働大臣の「許可」を受ける必要があります。2015年以降は、すべての労働者派遣事業が許可制となり、資産要件や適正な事業運営体制、個人情報保護体制など厳格な基準が定められています。申請時には派遣元責任者の講習履修、事業計画書や必要書類の提出、場合によっては事業所調査も行われます。

有料職業紹介事業は、求職者と求人企業の間を仲介し、雇用契約成立に際し手数料や報酬を得る事業です。雇用契約は求職者と求人企業間で直接締結され、人材紹介会社はあくまで仲介者として関与します。

この事業も職業安定法に基づいて厚生労働大臣の「許可」が必要であり、2025年1月からは新たに許可要件の強化も実施されています。申請には資産要件、事業計画、管理体制などをクリアしなければなりません。定期的な更新や報告義務もあります。

下記の比較表で、許可基準の主な相違点を簡単にまとめます。

区分労働者派遣事業有料職業紹介事業
許可権者厚生労働大臣厚生労働大臣
対象となる事業所数1事業所ごと1事業所ごと
許可に求められる資産要件資産2,000万円以上・負債額純資産額制限等資産500万円程度(2025年1月要件強化有)
事業内容の特徴派遣社員は派遣元と雇用契約・派遣先の指揮命令下で業務紹介先と直接雇用契約・手数料等を受領
法的根拠労働者派遣法職業安定法
許可の有効期間初回3年・以降5年通常5年(更新制)
課せられる主な義務厚労省への定期報告・雇用管理など多数厚労省への定期報告・管理者配置など
  • どちらも厚生労働大臣の許可が必要です。
  • 許可後も法令遵守や定期報告、管理体制の維持が求められます。
  • 無許可営業には罰則があります。

例えば、架空のA社が人材派遣事業と職業紹介事業の双方を検討する場合、派遣事業では自社雇用したスタッフを直接他企業へ派遣するのに対し、紹介事業では求職者と求人企業のマッチングを行い、雇用契約自体に関与しません。申請書類や準備すべき資金、各種ガイドラインも異なるため、事前の十分な調査と備えが大切です。

  • 労働者派遣と職業紹介の兼業は可能?
    → 可能ですが、それぞれで許可取得が必要です。
  • 許可要件に満たない場合は?
    → 許可を得るまで営業できず、無許可営業は罰則の対象となります。

会社設立後に労働者派遣事業や有料職業紹介事業へ参入するには、それぞれ厚生労働大臣の厳格な許認可基準をクリアしなければなりません。事業形態や許可基準は大きく異なるため、両者の違いを十分に理解し、ご自身の経営計画やリスク管理に役立ててください。許認可取得の際は、最新の公的情報(厚生労働省公式サイト等)を必ずご参照ください。