マイクロ法人設立時に検討すべき資本金と運用規模の目安

マイクロ法人とは、主に代表者1人で運営される小規模な法人を指します。個人事業主やフリーランスが節税や社会保険料の最適化を目的に設立するケースが多く、従業員を雇わずにシンプルな経営体制をとるのが特徴です。

資本金1円から設立可能

2006年の会社法改正により、株式会社や合同会社は資本金1円から設立できるようになりました2。ただし、資本金が極端に少ない場合は、社会的信用や資金調達の面で不利になることがあります。

社会的信用と資金調達

資本金が100万円未満の場合、銀行口座の開設や公的融資の審査で不利になることがあります。特に実店舗を持つ銀行での口座開設や、創業融資を希望する場合は、資本金100万円以上が望ましいとされています。

許認可事業の最低資本金

特定の業種(例:人材派遣業、建設業、旅行業など)では、許認可取得のために最低資本金額が定められている場合があります。事前に行政機関の要件を確認しましょう。

運転資金の確保

設立後3か月間の運転資金を資本金で賄えるように設定するのが安心です。事務所の家賃や設備投資、光熱費など、初期費用をシミュレーションして資本金額を決めることが推奨されます。

小規模経営に適した運用規模

マイクロ法人は、代表者1人で運営することが多く、従業員を雇わないケースが一般的です。中小企業庁の定義によれば、資本金5,000万円以下かつ従業員100人以下の会社が「サービス業」の中小企業とされていますが、マイクロ法人はこれよりもさらに小規模な運営が想定されます。

実際の運用規模例

  • 年間売上100万円~300万円程度
    生活費の一部や副業収入を法人化する場合、年間売上が100万円~300万円程度でもマイクロ法人の設立は可能です。
  • 初期費用は10万円~20万円程度
    合同会社の場合、設立費用は10万円前後、株式会社の場合は20万円前後が一般的です。
  • 維持費は年間7万円~
    法人住民税の均等割(最低額)が年間7万円かかります。

事例1:ITコンサルタント(田中さん、40歳、独身)

田中さんはフリーランスのITコンサルタントとして年収250万円。節税と社会保険料の最適化を目的に、資本金100万円でマイクロ法人を設立。設立後は、個人事業と法人を併用し、法人からは最低限の役員報酬を受け取ることで、社会保険料の負担を抑えています。

事例2:副業収入の法人化(佐藤さん、35歳、既婚・子1人)

佐藤さんは本業の傍ら、ネットショップ運営で年間売上120万円。資本金50万円で合同会社を設立し、経費計上や節税効果を得ています。設立費用を抑えつつ、必要な運転資金を確保する形で運用しています。

マイクロ法人の資本金は1円から設定可能ですが、社会的信用や資金調達、税制上のメリットを考慮すると、100万円以上かつ1,000万円未満に設定するのが現実的です。運用規模は、代表者1人で無理なく管理できる範囲(年間売上100万円~300万円程度)から始めるのが安心です。設立時には、事業内容や将来の展望、必要な許認可の有無を十分に検討し、専門家に相談しながら最適な資本金と運用規模を決定しましょう。