会社の機関設計|取締役会や監査役を定款に記載する際の実務
はじめに
会社を設立する際に重要なポイントの一つが、会社の機関設計です。特に取締役会や監査役といった機関をどのように設置し、それを定款にどう記載するかは、会社の意思決定や監査体制の基盤となり、正確な理解と実務対応が求められます。本記事では、会社法に基づく機関設計の基本と、取締役会や監査役を定款に記載する際の具体的な実務について解説します。
会社の機関設計とは
会社の機関設計は、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与、さらに委員会・執行役など、会社法で定められた複数の会社機関のうち、どの機関を設置するかという設計のことです。機関設計は、会社の規模や株式の譲渡制限の有無によって選択肢が変わります。公開会社は取締役会の設置が義務ですが、非公開会社(株式譲渡制限会社)は取締役会の設置が任意です。また、監査役の設置も取締役会設置会社の場合、原則として義務づけられています(会社法327条2項)。
取締役会の設置と定款記載の実務
取締役会を設置する場合、定款には必ず「当会社は取締役会を置く」と明記する必要があります。この記載がなければ、取締役会は存在しないものとされます。さらに、取締役会設置会社の場合は、最低でも取締役が3名以上必要となりますので(会社法329条)、定款にはその旨も考慮しながら記載します。
定款の該当条項には、総則として機関の設置について触れ、実際に取締役会を設置することを明示できます。たとえば、「当会社は取締役会を設置し、取締役は○名とする」というように規定します。この記載は登記事項でもあり、変更する場合は株主総会の特別決議が必要で、変更登記も必須となるため注意が必要です。
監査役の設置と定款記載の実務
監査役は、取締役等の職務執行を監査する機関であり、取締役会設置会社においては原則として監査役を設置しなければなりません。監査役の設置についても、定款に「当会社は監査役を○名置く」と明記することが必要です。監査役の人数は通常1名以上ですが、複数名設置することも可能です。
また、監査役の権限を限定する場合(例:会計監査に限定する)などの特別な記載も定款に盛り込むことがあり、その場合も正確に文言を定める必要があります。監査役の設置と権限に関する定款記載は会社の監査体制に直結するため、内容を専門家とよく確認しながら作成することが望ましいです。
定款記載のポイント
定款に機関設計を記載する際には、以下のポイントに注意します。
- 機関の設置を明確に記載し、取締役会や監査役の設置有無をはっきりさせること。
- 取締役会設置会社の場合は、取締役の人数(3名以上)や監査役の人数(1名以上)規定も含めること。
- 監査役の権限範囲を限定する場合は、その内容を具体的に記載すること。
- 定款の記載内容は登記事項となるため、変更には株主総会の特別決議と登記手続が必要であること。
- 総則として会社の商号、所在地、目的等とともに機関設計の基本的事項を定めること。
このように会社設立時点での正確な機関設計の定款記載は、後の運営の円滑さや法的安定性に大きく寄与します。
まとめ
会社の機関設計は、会社の意思決定機関や監査機関の設置選択を指し、取締役会の設置は公開会社で義務付けられています。取締役会や監査役の設置は、必ず定款に明記しなければならず、その記載は登記事項で、変更には株主総会の特別決議を要します。特に監査役の権限範囲については定款で明確にしておくことが重要です。会社設立の段階から法律専門家の助言を受けつつ、正確で法令に則った機関設計を行うことで、健全なガバナンス体制の構築に繋がります。