マイクロ法人による配当金の受取と会計処理の実務

近年、節税や資産運用の観点から「マイクロ法人」を設立し、法人名義で投資を行うケースが増えています。特に配当金の受取とその会計処理は、個人とは異なる法人特有のルールや注意点が存在します。本記事では、マイクロ法人が配当金を受け取った際の会計処理の実務と、税務上のポイントについて、国税庁等の公的情報をもとに解説します。

マイクロ法人とは、主に1人または少人数で運営される小規模な株式会社や合同会社を指します。個人事業主とは異なり、法人格を持つことで節税や社会保険料対策、資産管理の柔軟性などのメリットがあります。

マイクロ法人が証券会社の法人名義口座で株式を保有し、配当金を受け取る場合、会計処理は以下のように行います。

1. 配当金の仕訳

配当金は「受取配当金」として営業外収益に計上します。実際に入金される金額は、源泉所得税等が差し引かれた後の金額です。仕訳には2つの方法があります。

【方法1】入金額のみを仕訳する方法

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2025/06/25普通預金84,685円受取配当金84,685円配当金受取(源泉徴収後)

【方法2】配当金の総額と源泉所得税を分けて仕訳する方法

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2025/06/25普通預金84,685円受取配当金100,000円配当金受取
2025/06/25租税公課15,315円源泉所得税

この場合、源泉所得税は「租税公課」や「仮払法人税等」として処理し、決算時に法人税額から控除します。上場株式等の配当金には15.315%、それ以外は20.42%の源泉所得税が課されます。

2. 帳簿・証憑類の保存

法人は、配当金の支払通知書や証券会社からの明細など、証憑類を電子データ等で7年間保存する義務があります。

1. 受取配当金の益金不算入制度

法人が配当金を受け取った場合、一定の要件を満たせば「益金不算入」制度が適用されます。これは、配当金が法人税課税後の利益から支払われているため、二重課税を防ぐ目的で設けられています。

  • 保有株式の区分により、益金不算入割合が異なります。
    • 完全子法人株式等(100%保有):全額益金不算入
    • 関連法人株式等(1/3超保有):50%益金不算入
    • 非支配目的株式等(5%以下保有):20%益金不算入
  • ただし、短期保有株式(配当基準日以前1か月以内に取得し、基準日以後2か月以内に譲渡したもの)は益金不算入の対象外です。

2. 留保金課税やその他の税務リスク

マイクロ法人の場合、利益を内部に留保し続けると「留保金課税」の対象となることがあります。また、配当金の益金不算入の計算や株式等の保有割合の判定を誤ると、法人税額に大きな影響を及ぼすため、正確な管理が求められます。

例:マイクロ法人「B合同会社」が法人名義で上場株式を1,000株保有し、期中に配当金10万円を受け取りました。証券会社からは源泉所得税15,315円が差し引かれ、実際の入金額は84,685円でした。

仕訳例(方法2)

日付借方科目金額貸方科目金額摘要
2025/06/25普通預金84,685円受取配当金100,000円配当金受取(B合同会社)
2025/06/25租税公課15,315円源泉所得税
  • 決算時、保有割合に応じて益金不算入額を計算し、法人税申告書で調整します。

マイクロ法人による配当金の受取と会計処理は、個人とは異なり法人税法や会計基準に基づいた厳格な管理が求められます。特に、受取配当金の益金不算入制度や帳簿・証憑類の保存義務、留保金課税のリスクなど、税務上の注意点も多岐にわたります。実務で迷う場合は、国税庁など公的情報を参照し、専門家に相談することをおすすめします。

今後もマイクロ法人を活用した資産運用や節税を検討される方は、正確な会計処理と税務管理を徹底しましょう。