マイクロ法人の経費計上で注意すべきポイント|経費として認められる範囲とよくある誤り
はじめに
近年、節税や社会保険料の最適化を目指して「マイクロ法人」を設立する方が増えています。マイクロ法人は、個人事業主よりも経費計上できる範囲が広がるため、上手に活用すれば大きなメリットを得られます。しかし、経費計上のルールを誤ると、税務調査のリスクや思わぬ負担増につながることも。この記事では、マイクロ法人の経費計上で注意すべきポイント、経費として認められる範囲、そしてよくある誤りについて詳しく解説します。
マイクロ法人で経費として認められる範囲
マイクロ法人を設立すると、個人事業主時代よりも経費として認められる支出の幅が大きく広がります。主な経費項目は以下の通りです。
- 役員報酬
経営者自身に支払う役員報酬は、法人の経費として計上できます。ただし、役員報酬には「定期同額給与」など税法上のルールがあり、毎月同じ金額で支給する必要があります。 - 社宅・家賃
自宅を社宅として法人契約し、家賃の50〜80%程度を経費にできる場合があります。個人事業主の場合は10〜30%程度が目安なので、法人の方が有利です。 - 接待交際費
取引先との飲食や贈答など、事業のための接待費用は年間800万円まで全額損金算入可能です(中小法人の場合)。 - 出張手当・交通費
出張旅費規程を作成することで、日当や手当も経費にできます。実費の交通費や宿泊費も当然経費となります。 - 生命保険料・自動車保険料
役員や従業員を被保険者とする生命保険料、法人所有の自動車保険料も条件を満たせば経費にできます。 - 通信費・IT関連費用
業務に必要な電話代やインターネット利用料、パソコンやソフトウェア購入費も経費計上可能です。 - 福利厚生費・退職金
福利厚生費や退職金も、法人ならではの経費として計上できます。
こうした経費は、事業に必要な支出であることが大前提です。私的利用との区別が明確であることが重要です。
経費計上でよくある誤りと注意点
マイクロ法人の経費計上では、以下のような誤りがよく見受けられます。
- 私的支出を経費に含めてしまう
法人の支出であっても、実際には私的利用であれば経費として認められません。たとえば、家族旅行や個人の趣味に関する費用を経費にすると、税務調査で否認されるリスクがあります。 - 家事按分の根拠が曖昧
自宅を事務所として使う場合、事業利用部分の割合を明確にしなければなりません。根拠が不明確だと、経費として認められないことがあります。 - 役員報酬のルール違反
役員報酬は「定期同額給与」などの条件を満たさないと経費になりません。途中で金額を変更したり、臨時で支給した分は経費にならないため注意が必要です。 - 領収書や証憑の管理不足
経費として計上するには、領収書や契約書など証拠書類の保管が必須です。不備があると経費が認められないことがあります。 - 節税目的で経費を過剰に増やす
節税を意識しすぎて経費を増やしすぎると、法人税は減っても所得税や社会保険料が増える場合があります。バランスを考慮しましょう。 - 法人維持コストを見落とす
法人には、赤字でも発生する法人住民税(最低7万円)、社会保険料、税理士報酬などの維持費があります。これらを見落とすと、かえって負担が増えることもあります。
事例:経費計上の誤りによるトラブル例
あるマイクロ法人の経営者Aさんは、自宅の家賃全額を経費に計上していました。しかし、実際には事業で使っているのは自宅の一部だけ。税務調査で「事業利用部分のみが経費」と指摘され、過去の申告分について修正申告と追徴課税が発生しました。
このように、経費計上の根拠や証拠が曖昧だと、後から大きな負担が生じることがあります。
公的機関の情報も必ず確認を
経費計上のルールや法人税の詳細は、国税庁や中小企業庁などの公的サイトで最新情報を確認することが大切です。たとえば、国税庁「法人税の申告と納付」や中小企業庁「中小企業の会計・税制」などの情報を参考にしましょう。
まとめ
マイクロ法人は、個人事業主に比べて経費計上の幅が広がり、節税や社会保険料の最適化など多くのメリットがあります。しかし、経費計上のルールを誤ると、税務調査や予想外の負担増につながるリスクも。経費は「事業に必要な支出」であることを明確にし、証拠書類をしっかり管理しましょう。疑問点があれば、税理士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。