役員変更時に必要な手続きと実務上の注意点
はじめに
会社経営において「役員変更」は避けて通れない重要な手続きです。役員の就任・退任・重任(再任)など、さまざまな場面で正確な手続きを怠ると、会社運営に支障をきたすだけでなく、法的なペナルティを受ける可能性もあります。本記事では、役員変更時の具体的な流れと実務上の注意点をわかりやすく解説します。
役員変更登記とは? どんなときに必要?
株式会社や一般社団法人などでは、以下のような場合に「役員変更登記」が必要です。
- 取締役・監査役などの役員が就任したとき
- 役員が任期満了で退任したとき
- 役員が辞任・解任・死亡したとき
- 任期満了後に同じ役員が再任(重任)されたとき
- 役員の氏名や住所が変更になったとき
特に注意が必要なのは「重任(再任)」の場合です。役員が変わらず同じ人が続投する場合でも、任期満了後は必ず役員変更登記が必要となります。これを怠ると、100万円以下の過料が科されることもありますので、必ず期限内に手続きを行いましょう。
役員変更手続きの流れ
役員変更の手続きは、主に以下のステップで進みます。
1. 株主総会の開催
- 役員の選任・解任・重任などを決議するため、株主総会を開催します。
- 任期満了や新任の場合は「定時株主総会」、任期途中の辞任・解任・死亡などは「臨時株主総会」となります。
2. 承認決議
- 株主総会で議案が承認されると、役員変更が正式に決定します。
3. 必要書類の作成・準備
- 役員変更登記申請書(法務局のホームページからダウンロード可)
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書(新任・重任の場合)
- 辞任届(辞任の場合)
- 死亡届(死亡の場合)
- 印鑑証明書(新任の場合)
- 本人確認書類(住民票、運転免許証、マイナンバーカードのコピーなど)
※必要書類は変更内容によって異なります。詳細は法務局の公式サイトを参照してください。
4. 登記申請
- 必要書類を揃え、会社の本店所在地を管轄する法務局にて「役員変更登記申請」を行います。
- 役員変更の事由が発生してから2週間以内に申請が必要です。
5. 登記完了
- 登記申請後、通常は1週間程度で登記が完了します。
実務上の注意点
1. 期限厳守(2週間以内)
役員変更登記は、事由発生から2週間以内に申請しなければなりません。これを過ぎると、代表者などに過料(最大100万円)が科される場合があります。
2. 必要書類の内容・記載ミスに注意
書類の記載ミスや添付漏れがあると、法務局から補正指示が出て手続きが遅れることがあります。特に、就任承諾書や印鑑証明書の添付漏れ、株主リストの記載内容などはよく確認しましょう。
3. 会社の定款の確認
役員の任期や選任・解任手続きについては、会社の定款で特別な定めがある場合があります。必ず定款を確認し、規定どおりに手続きを進めましょう。
4. 役員の本人確認
新任役員の場合、本人確認書類の添付が必要です。住民票の写しや運転免許証、マイナンバーカードのコピーなどを準備し、コピーの場合は「原本と相違ない」旨の記載と本人の記名押印が必要です。
5. 登録免許税の納付
登記申請時には登録免許税が必要です。資本金1億円以下の場合は1万円、1億円超の場合は3万円が原則です。
事例紹介
東京都内のIT企業(資本金500万円)では、取締役Aさんの任期満了に伴い、同じAさんが再任されました。会社側は「役員が変わらないから登記は不要」と誤認していましたが、行政書士のアドバイスにより、株主総会議事録や就任承諾書、株主リストなどを揃えて2週間以内に法務局へ登記申請を行いました。結果、過料を回避し、無事に登記が完了しました。
まとめ
役員変更は、会社運営に不可欠な法定手続きです。特に「重任(再任)」の場合も登記が必要であり、2週間以内の申請を怠ると過料のリスクがあります。手続きの流れや必要書類は変更内容によって異なるため、法務局や公的機関の公式情報を必ず確認し、正確な手続きを心がけましょう。ご不明な点があれば、専門家への相談もおすすめします。