取締役会・株主総会の開催方法と議事録作成の実務
はじめに
会社設立後、経営を円滑に進めるためには「取締役会」や「株主総会」の適切な開催と、法令に沿った議事録の作成が欠かせません。特に中小企業やスタートアップでは、これらの手続きが初めてとなるケースも多く、「どのように開催すればよいのか」「議事録はどこまで詳細に記録すべきか」といった疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、行政書士の視点から、会社法や関連法令に基づく正確な情報をもとに、取締役会・株主総会の開催方法と議事録作成の実務について、分かりやすく解説します。
取締役会・株主総会の基本と開催方法
取締役会とは何か
取締役会は、取締役が複数名いる株式会社で設置される意思決定機関です。会社法第362条により、原則として3名以上の取締役が必要となり、会社の重要な業務執行の決定や取締役の職務執行の監督を行います。
株主総会とは何か
株主総会は、会社の最高意思決定機関であり、定款変更や取締役選任など、会社運営の根幹に関わる重要事項を決定します。通常、定時株主総会は毎事業年度終了後一定期間内に開催する必要があります(会社法第295条)。
開催方法のポイント
- 招集通知:株主総会や取締役会の開催には、原則として事前に招集通知を発する必要があります。会社法では、株主総会の場合、開催日の2週間前までに通知することが原則です(公開会社でない場合は1週間前まで)。
- 開催場所と方法:従来は物理的な会場での開催が一般的でしたが、近年はオンライン(ウェブ会議)による開催も認められるようになっています。会社法改正や経済産業省のガイドラインにより、定款で定めれば「バーチャル株主総会」も可能です。
- 議決権の行使:株主総会では、議決権行使書面や電子的方法による議決権行使も認められています。
議事録作成の実務と注意点
議事録作成の法的義務
会社法第318条・第369条等により、株主総会・取締役会の議事録作成は法的義務です。議事録を作成し、署名または記名押印(電子署名も可)を行い、会社で一定期間保存する必要があります。
議事録に記載すべき主な内容
- 開催日時・場所
- 出席者(取締役会の場合は取締役・監査役、株主総会の場合は出席株主数や議決権数)
- 議題とその内容
- 発言・質疑応答の要旨
- 決議事項とその結果
- 議長・議事録作成者の氏名
AI議事録作成ツールの活用
最近では、AI議事録作成ツールを活用して、会議内容を効率的にまとめる企業も増えています。AIツールはキーワードの自動抽出や要約機能、書式設定などにより、議事録作成の手間を大幅に削減できますが、最終的には法定記載事項が漏れていないかを確認し、必要に応じて修正・補足することが重要です。
事例紹介
設立2年目のIT企業A社では、初めての定時株主総会を開催する際、オンライン会議システムを利用しました。事前に株主へ電子メールで招集通知を送り、当日は議決権行使もオンラインで受け付けました。議事録作成にはAI議事録ツールを活用し、会議終了後に内容を確認・修正し、法定記載事項を網羅した上で電子署名を付与して保存しました。
よくある質問と実務上の注意点
- Q. 議事録はどのくらい詳細に記載すべきですか?
- A. 会社法上、議事の経過の要領およびその結果を記載することが求められています。重要な発言や議論の経過は簡潔にまとめ、決議事項は明確に記載しましょう。
- Q. 議事録の保存期間は?
- A. 株主総会議事録は10年間、取締役会議事録は10年間の保存が義務付けられています(会社法第318条・第371条)。
- Q. オンライン開催の場合の注意点は?
- A. 定款でオンライン開催を認めているか確認し、通信障害などのリスク管理も事前に検討しましょう。
まとめ
取締役会・株主総会の開催と議事録作成は、会社運営の信頼性と法令遵守のために不可欠な手続きです。会社法や関連ガイドラインに基づき、適切な方法で開催し、AIツールも活用しながら正確な議事録を作成・保存しましょう。疑問点がある場合は、行政書士など専門家への相談も有効です。